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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第148回   おめでたい朝
さてはて、おめでたい朝が高野山にもやってきた。
地球は、どんでんがえしを繰り返しながら、太陽の周りを回っていた。そして、月はどんでん返しを繰り返しながら、地球の周りを回っていた。それはそれは不思議な物理現象であった。滞(とどこお)りなく事は物理法則という神によって行われていた。しかし、いつ途絶えるかは誰にも分からないことでもあった。だから、今日も無事に太陽が昇る朝は、おめでたいことであった。一日の初めの朝に祈りをささげることは、大地の平和つまり世界平和を祈ることでもあった。それは、同時に自分の心の朝でもあり、自分の心の平穏でもあった。そしてそれは、弘法大師の教えでもあった。
太陽が昇ったばかりの頃だった。風は気持ちいいそよ風になっていた。花々はすでに花弁を広げて太陽に挨拶をしていた。山雀(やまがら)が、あちこちでさえずっていた。
きょん姉さんは、ログハウスの外で体操をしていた。そこへ福之助がやってきた。
「気持ちのいい朝だなあ〜!」
「そうですねえ。」
「まるで、今までとは違う爽快な朝だなあ〜。」
「そうですねえ。」
「場所が変われば、朝も変わるんだなあ〜。」
「そうですねえ。」
「いい空気だ〜〜。」
「そうですねえ。二酸化炭素や有毒ガスの数値が違います。」
「やっぱりね。」
「病気にもなりませんね。」
「景色もいいし、なるわけないよ。はい、前屈〜〜!」
姉さんは前屈すると、両手を地面についた。福之助も真似をした。が、両手は地面にはとどかなかった。姉さんは見ていた。
「あれっ?あんたつかないの?」
「はい。」
「あんた、身体が硬いねえ。」
「以前はついてたんですけどねえ?」
「ほんとう?」
「はい!」
姉さんは動きを止め、福之助の前に立った。
「もう一度、やってごらん。」
「はい。」
やっぱりつかなかった。
「もう一度、やってごらん。」
「はい。」
やっぱりつかなかった。腰のジョイントが軋(きし)んだ。
「変な音したぞ?」
「そうですねえ。」
「油が切れてるんじゃないか?」
「そうですねえ。」
「身体が硬いと頭脳も硬くなるぞ。」
「そうなんですか?」
遠くの方で、狸(たぬき)が二匹、ロボットの福之助を見ていた。
「あっ、狸だ!」
「ほんとだ!」
「高野山は、平和なところだねえ。」
「そうですねえ。」
狸は逃げていった。
「あらあら、逃げて行っちゃった。食べやしないよ。」
「ちょっと、油を注してきます。」
「もう体操は終り、わたしも戻るよ。」
「ああ、そうですか。」
「今日の朝食は何だい?」
「フレンチトーストと、トマトとバナナとミカンのサラダです。」
「トマトとバナナとミカンのサラダ。それどういうの?」
「皮をむいたバナナを適当な大きさに切って、トマトも適当な大きさに切って、ミカンの缶詰をシロップごとぜんぶ入れて混ぜました。」
「な〜んだよ、それ。オーソドックスな料理だなあ。」
「熱いコーヒーもありますよ。」
「おお〜、いいねえ。」
「姉さん、コーヒー好きでしたっけ?」
「ときどきね。」
「アニーさんが待ってます。早く戻りましょう。」
「ああ、そう。」


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