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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第147回   不気味な新宿
蝶子は、インターネットで仕事を検索していた。
「介護の仕事はあるんだけど、安いのよねえ…」
龍次は、隣の席で窓の外の様子を見ていた。
「そうだねえ。」
「もう少し高かったらなあ…」
「安すぎるよね。」
「けっこう大変なのよ、介護の仕事は。精神的にも肉体的にも重労働で。」
「やったことあるの?」
「高校生のときに、ボランティアで。」
「内申書対策かな?」
「そうなの。」
「世の中、そんなもんだな。」
「もっと、政府が援助すればいいのよ。」
「もっと、お金を出せってこと?」
「そう。」
「不景気で、金がないからなあ。これ以上は無理だよ。」
「退職金を何千万いただいて、天下りでちょっと勤めて、また退職金で何千万、それの繰り返し。一億くらいは貰ってるんじゃないの?」
「エリート官僚の天下りね。」
「そういうのを介護に回せばいいのよ。」
「そうだね。」
「どこが、いちばん使ってるの?」
「…自衛隊じゃないかな?最新の軍事兵器が高いんだよ。」
「自衛隊の人達って、日ごろ何してるの?」
「訓練だよ。」
「戦争の?」
「まあ、そうだろうね。災難援助訓練なんかもやってるんじゃないの。」
「ああ、台風とか洪水とか、そういうのね。」
「そうそう。」
「そう言えば、簡易のお風呂とかをニュースで見たことあるわ。」
「そういうこともやってるんだよ。」
「だったら、いいことを思いついたわ。」
「うん?」
「災難援助もやるんでしょ?」
「そうだよ。」
「だったら、介護もやればいいのよ。」
「うん?」
「自衛隊が介護もやればいいのよ。」
「自衛隊が介護?」
「そしたら足腰も精神も鍛えられるじゃない。」
「なるほどね。いい考えだけど、そりゃあ無理だよ。」
「どうして無理なの?」
「プライドの問題だよ。」
「プライド?」
「自衛隊のプライド。」
「自衛隊ってさあ〜、国民を守ってるんでしょう。」
「そうだけどさ。」
「介護だって、国民を守ってるわけじゃん。」
「つまりね、自衛隊は国民を守ってるんじゃないんだよ。」
「えっ、何を守ってるの?」
「国土を守ってるんだよ。」
「国土って、土地を?」
「日本の土地を。」
「そうなの〜〜〜?」
「だから、自殺者が出ても何もしないだろう。」
「なるほど〜。」
商店街の拡声器からアナウンスが流れた。
 < 通りの封鎖は解除されました 通りの封鎖は解除されました >
「あっ、解除されたわ。出ましょう!」
「そうだね、今のうちだね。」
「もう十時だわ。」
「蝶子ちゃんの家まで乗せてってあげるよ。」
「ありがとう。」
「じゃあ行こう。」
大通りに出ると、頭脳警察のパトロールカーも治安ロボット・ハルもなかった。普通の警官は数多くいたが、いつもの以上に不気味なくらいに平穏になっていた。
「なんだか、新宿じゃないみたい。」
「そうだねえ。」
「不気味な新宿ね。」
「そうだねえ。」
「明日は、どこに行けばいいの?」
「迎えに行くよ。八時に。」
「分かったわ。」


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