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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第140回   漫才ロボット
ざっくばらんな風が、ざっくバランスに吹いていた。永久(とわ)にある時間の中で、果たして時間は永久(とわ)にあるのだろうか。そんなことは、今を生きているものにはどうでも良かった。今があれば、そんなことはどうでもいいことだった。時間は前に進んでいるのだろうけど、いったいそれがどうしたって言うんだい。と、風がそう言いながら吹いているみたいだった。だから、寂しがり屋の風はとってもとっても饒舌(じょうぜつ)だった。いつも、寂しがり屋の風は、不動の大地に甘えながら、ざっくバランスに吹いていた。競い合いながら、ざっくバランスに吹いていた。
きょん姉さんが、ログハウスのドアを開け、中に入ると、いきなり何者かが横から奇声を発して襲ってきた。
「空(す)きあり〜〜!」
きょn姉さんは、とっさに身を屈めて相手の懐(ふところ)に入って投げ飛ばした。
相手は、ドタンと後方に尻餅をついて倒れこんだ。福之助だった。手にアルミのホウキを持っていた。
「なあんだ、おまえかぁ!」
「あたたたたた。姉さん、投げ飛ばさなくってもいいじゃないですかぁ〜。」
「ごめんごめん。つい反射的にでたんだよ。」
アニーが拍手をしていた。
「お見事!合気道の極意、入り身投げですね!」
「えっ?これ紅流の投げ技なんですよ。」
「ああ、そうなんですかあ。」
福之助は立ち上がった。
「あ〜〜〜あ、やらなきゃ良かった!」
姉さんが睨みつけた。
「おまえねえ、わたしがポンコツみたいに殴られるわけないだろう!」
「ポンコツ?」
「あんたのことだよ。」
「そりゃあないよ、姉さん!」
「わたしは、武道の達人なんだよ。」
「忘れていました。」
「もう一回投げ飛ばしてやろうか?」
「もうけっこうです!」
「三十歳もなったロボットがやることじゃないだろう。子供に馬鹿にされるぞ。」
「さんじゅう?」
「三十歳じゃなかったっけ?」
「まだ、二十九歳五ヵ月十七日六時間十九分五十二秒ですよ!」
「あっ、そうだったっけ?」
「失礼しちゃうなあ。」
「そんなことはどうでもいい。とにかく大のロボットがやることじゃないだろう。」
「だいのロボット?何のことですか?大きいって意味ですか?私は大型ロボットじゃありませんよ。」
「歳を考えてやれってことよ。」
「わたしがですか?歳を考えて?」
「そういうこと。」
「ロボットに歳があるんですか?」
「あるじゃないか。毎年毎年、歳をとって老けて行くだろう。」
「老けはしませんよ。劣化はしてますけど。」
「それだよ。同じじゃないか。」
「わたしは、人間じゃありません。そういう論理は間違ってます。」
「何が?」
「人間の行動を、ロボットにそのまま当てはめるのはおかしいです。」
「屁理屈ロボットだなあ〜。」
「屁理屈じゃありませんよ。」
アニーが笑い出した。
「あなたたちの会話、とっても面白いわ。漫才とかいいんじゃないかしら?」
姉さんが答えた。
「ロボットと人間の漫才ですか?」
「はい。人間と人間より面白いですよ。」
福之助が答えた。
「姉さん、この仕事辞めて、やりましょうか?きょん姉さアンド福之助ってどうでしょう?」
福之助の目は鋭く、冗談ではなかった。



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