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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第138回   死神の肩叩き
男は笑った。老人は缶チューハイを旨そうに飲んでいた。
「いい笑顔じゃないか、君!」
「そうですか?ありがとうございます。」
「笑顔で接すると、相手も笑顔になる。大切なことだよ。」
「はい。」
「怒った顔で接する奴だと、君だって嫌だろう。」
「はい。」
「単純なことなんだよ。人生は。難しいことではない。いい笑顔してるよ、君は。ねえ、お姉さん?」
老人は、きょん姉さんの肩を軽くポンと叩いた。姉さんは、ちょっとびっくりした。
「ちょっと、飲みすぎではないですか?」
「ま〜ぁだ、まだ。今夜は飲みますよ〜!」
老人は、姉さんを見ながら首をひねっていた。
「お姉さんの名前、何だったかなあ?」
きょん姉さんは、教えるように答えた。
「葛城(かつらぎ)です。」
「あ〜、思い出した!葛城(かつらぎ)さんだ!」
姉さんは、父を見ているようで、いたって笑顔だった。
「あなた、心理学か何かやってたの?」
「いいえ、別に。」
「どうして分かったの?」
「えっ?」
「この人のこと?」
「う〜〜〜ん、何でなんでしょう?」
男が質問した。
「えっ、何のことですか?」
「びっくりしないでくださいよ。」
「はい。」
「死神が、あなたの背後にいたんですよ。」
「え〜〜〜!」
「さっきまでね。釜を持って。」
姉さんも、びっくりした。
「え〜〜〜、そうなんですか?」
「はい。」
「だから、来たんですか?」
「そうです。死ぬことを考えると、死神は直ぐにやって来るんですよ。」
男は、真剣な眼差しになり、目の前の宙を睨んでいた。
「…確かに、死にたいと思っていました。」
「やっぱり。」
老人は、姉さんに尋ねた。
「死神を見て来たんじゃないんだ?」
「はい。」
「じゃあ、どうして?」
「なんとなく、危ないと思って。」
「危ない…」
「はい。」
「それは、凄い能力だ。昔からですか?」
「そう言われれば、そうかも知れません。」
「例えば?」
「小学生の頃、死体を発見したことがあるんです。」
「死体を?」
「父と山に遊びに行ったときに、父に、お父さん、近くで人が呼んでるわって言ったら、人が死んでたんです。」
「…それは、きっと、霊感が強いんだよ。」
「そうかも知れません。」
男が不安気に助けを求めるように、二人に尋ねた。
「あの〜〜〜ぅ、死神は、もういないんですね。」
老人が答えた。
「もういないよ。死のうなんて思ったら、また来るよ。」
「はい。絶対に思いません!」
「死神が、肩を叩いたら、それまでだからね。」
「えっ!?」
「あの世行き!」
姉さんは驚いた。
「えっ、そうなんですか!?」
「死神の肩叩きって言うんだよ。」
「死神の肩叩き…」
男は、少し震えていた。顔が青ざめていた。
「お〜〜、怖!」
ドングリの実が、男の右肩に落ちた。男は驚いて立ち上がった。
「お〜〜〜、びっくりした!」
老人と姉さんは、男を見ながら笑った。風は少し止んでいた。



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