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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第135回   寂しがり屋の秋の夜風
秋の寂しがりやな、でもね強(したた)かな夜風が吹いていた。
子供のように好奇心の強い姉さんは窓辺に座り、寂しがり屋の風と何かを見ていた。
「アニーさん、もう風邪は大丈夫なの?」
アニーは少し遅れて答えた。
「ええ、大丈夫です。熱も下がったみたいだし。」
「それは良かった。変な人がいるんですよ。」
「えっ?」
「こっちに見に来てくれません?」
「はい。」
アニーは立ち上がると直ぐにやって来た。
姉さんは指差した。
「あの人。」
男だった。木の下に座り、タバコを吸っていた。
「どこが変なんですか?」
「何か感じません?」
「…別に。」
「わたし、こういう仕事しているせいか、分かるんですよ。」
「えっ?」
「心の病んでる人が。直感的に。」
「あの人がですか?」
「ええ。」
その男は、寂しげに月を眺めていた。
姉さんは強く、そして深く呟いた。
「あの人、危ないわ。」
「危ない?」
「放ておくと、きっと死ぬわ。」
「えっ!?」
そういい残すと、姉さんは上着を着て出て行った。
その男は、大きな椎(しい)の木の下で煙草をふかしていた。
姉さんは、静かに近寄ると、静かに声を掛けた。
「こんばんわ。」
男は姉さんを見ると、小さな低い声で答えた。
「こんばんわ。」
気の弱そうな、四十前後の男だった。
「どうしたんですか?」
「えっ?」
「悩み事でもあるんですか?」
「…別に。」
「そういう顔してますよ。」
「…別に。」
「実は私、人の心が読めるんです。何でも話してください。」
「…人の心が読める?」
「はい。」
「ほんと?」
「はい。」
男は皮肉っぽく笑った。
「ふふふ、面白い人ですねえ。」
「何でも話してくださいよ。」
「面白い人だなあ。」
「この近くですか、お住まいは?」
「神戸です。」
「神戸!」
「見物に来ただけです。」
「高野山をですか?」
「ええ。」
「お一人でですか?」
「ええ。」
「高野山はいいところですよね。」
「まあね。」
男の目は深く沈み込むように寂しかった。
「これからどこへ?」
「どこへって、そんなことどうでもいいでしょう。」
隣のログハウスの絵描きの老人がやって来た。
「こんばんわ。」
姉さんは、とっても笑顔で挨拶を返した。
「こんばんわ。」
男は、迷惑そうな表情で黙っていた。
老人が男に、ぽつりと言った。
「お主、居場所を失くしたな。」
男は、老人の目を覗き込むように見ると、睨みつけた。



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