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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第134回   痴漢熊の五郎
パトロールロボット・ごんたが通り過ぎた後、クリスタル・ヨコタンが右手に何かを持って、長い髪を華麗になびかせながら駆けてやってきた。
土手の上で、ショーケンが軽く手を振った。アキラも真似をして軽く手を振った。
ヨコタンは、彼らの下で止まった。
「五郎が出てくるわ。早く人間村に戻って。」
ショーケンは首を傾げた。
「ごろう?」
アキラが質問した。
「ごろうって、何?」
「熊の五郎。この辺りのボス熊で、夜遅くなると出てくるの。」
ショーケンは驚いた。
「ほんと?」
「ほんとうよ。」
アキラが質問した。
「大きいの、その熊は?」
「とっても大きいわ。二百キロはあるわ。」
「人を襲うの?」
「そんなことはしないけど、一緒に遊ばないと怒るわ。」
「え〜〜〜、何それ?」
「遊び好きなの。人間をからかって遊ぶのが好きなの。」
「なんだ〜〜、そりゃあ?」
「一緒に遊ばないと怒りだして、投げ飛ばすの。」
「投げ飛ばす?」
「相撲が好きなのよ。」
ショーケンが皮肉っぽく笑った。
「まるで、金太郎の熊だなあ。」
ヨコタンの表情は真剣だった。
「早く!そこまで来てるかも知れないわ。」
ヨコタンは、右手に大きいフランスパンを持っていた。
ショーケンは、そのパンを見ながら尋ねた。
「それ、フランスパンだよね?」
「そうよ。」
「どうするの?」
「五郎の好物なの。出てきたらあげるの。その空きに逃げるの。」
「そんなの食べるの?」
「食べるわ。」
「今まで、襲われたことがあるんだ。」
「あるわ。」
「え〜〜〜、どうなったの!?」
「お尻を撫でて逃げて行ったわ。」
「エッチな熊だなあ。で、それだけ?」
「女性には、からかうだけで乱暴しないの。バイバイしながら去って行くの。」
「変な熊だなあ。」
アキラは笑っていた。
「面白い熊だなあ〜。相撲したくなってきたよ。」
ヨコタンが軽く叱(しか)った。
「怪我した人もいるんですよ。」
「じょうだん、じょうだん。」
「あなたが、アキラさん?」
「そうです。」
「はじめまして、ヨコタンと言います。よろしく。」
「こちらこそ、そろしくぅ〜!」
ヨコタンは微笑した。
「イメージ通りの人だわ。」
「えっ、えっ、それって、俺のこと?」
「はい。」
「どういう風に?」
「後で話します。とにかく危ないから急いで帰りましょう!」
アキラは、すっと立ち上がった。その後で、ショーケンも臆病な小動物のように周りを見ながら静かに立ち上がった。
「猿狩り小次郎の次は、熊の五郎か…、忙しいところだなあ。」



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