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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第13回   サイドワインダー
その頃、きょん姉さんと福之助は予定を早めて、千メートル級の峰々を縦走(じゅうそう )する竜神スカイラインを、最新の水燃料自動車で走っていた。
「これ、テストしてみたかったのよ。」
「そうだと思った。」
「このハンドル、まだ慣れないよ。」
ハンドルは、飛行機の操縦桿のように、上下にも動いた。
「これじゃあ、まるで飛行機ですねえ。大丈夫ですか?」
「う〜ん、なんとか。おまえこそ大丈夫かい。」
「もう、大丈夫ですよ。」
「もともと、いかれてるからね。」
「そりゃあ〜ないよ〜、姉さ〜ん!」
水燃料自動車は、水を電気分解した水素ガスで走る自動車(クルマ)だった。
左右には、ブナの原生林が広がっていた。
「もうすぐ、紅葉ですねえ。」
「そうだね。」
「標高が高いので、やっぱり少し寒いですねえ。」
「そうだね。でも、なかなかこんなところには来れないから、気持ちいいよ。」
「地球の空気の八割は、上空十一キロ以内の対流圏にあります。」
「うん、それで?」
「地球では、百メートル高くなると、対流圏の気温は約一度下がります。」
「ふ〜〜ん、そうなの。」
「これは、乾いた空気の場合の条件で、湿ってる場合だと、比率は低くなります。」
「ふ〜〜ん、そうなんだ。」
「この道は、冬は雪で通れなくなるそうですよ。」
「ああ、そうなの。
「姉さん、もう直ぐです。」
「分かってるよ。」
姉さんは、飛行機のようなハンドルを左に倒した。
すると、前輪と同時に後輪のタイヤも向きを変え、自動車(クルマ)はスライドしながら左側に寄って行った。
「なんだか、これ横にスリップしてるみたいで妙だねえ。まだ慣れないよ。」
「後ろで走ってた自動車(クルマ)の人、なんだかびっくりしてましたよ。」
「そうだろうね。この自動車(クルマ)は市販されてないからねえ。これ何という自動車(クルマ)だったっけ?』
「サイドワインダーです。砂漠に生息する、ガラガラ蛇の名です。」
「なんだか、まるで蛇に乗ってるみたいだよ。」
「え〜〜〜、蛇に乗ったことあるんですか!?」
「あるわけねえだろう!」
「ほんとに、なよなよと蛇のように走ってますねえ〜。」
「よりによって、わたしの大嫌いなものじゃないかよ〜〜!』
二人を乗せたガラガラ蛇(へび)は、ガラガラと音を立てながら、水蒸気を吐き出し、這(は)うように国道485号線に入って行った。
「曲がる度に、どうしてガラガラと言うのかねえ?」
「歩行者に対しての、安全のためじゃあないんですか?」
「なるほどお!」
十分ほど走ると、風景は変わった。
「なんだか、いきなり風景が人里っぽくなってきましたねえ。。」
「そうだねえ、いいねえ〜。」
福之助が叫んだ。
「なんだ、ありゃあ!」
姉さんも叫んだ。
「わ〜〜!」
それは、恐ろしく巨大な恐竜の壁画だった。姉さんは、壁画の下まで行くと、ガラガラ蛇(へび)を止め、外に出た。
そこには、高さ五十メートル以上の壁画がビルのようにそびえていた。
「うわ〜〜、凄いなあ〜、これ!」
「凄いですねえ。」
それは、まるで大きなナイフで削ったような断面だった。コンクリートで固められ、大きな恐竜が描かれてあった。
「どうやって、塗ったんだろうね?」
「ペンキじゃないみたいですねえ。」
二人は、しばらくの間、呆然(ぼうぜん)と見上げていた。
壁画の下のほうに、<日本一大きい花園村の大壁画>と、大きな文字で書いてあった。
「あ〜あ、首が痛くなあっちゃうよ。」
「わたしも、首のボルトが外れそうです。」
「この村、お金が余ってるんだねえ。」
「そうですねえ。」
「首に悪いから、もう行こう!」
「はい!」
福之助が首を戻すとの首の間接が、ギコっと唸った。


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