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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第125回   人を呪わば穴二つ
「兄貴、猿狩り小次郎だ!」
頭脳警察の追跡ヘリ・猿狩り小次郎は、遠くの山の上を旋回飛行していた。
「しつこいやつだなあ。」
「しつこいって?」
「さっきも来たんだよ。この上をな。」
「この上を来たの!?」
「ああ。さっき警報が鳴っただろう。」
「あれか〜。」
「で、どうなったの?」
「天軸山(てんじくさん)のミサイルで撃ち落すって脅したら、逃げて行ったよ。」
「高野山(こうやさん)には、ミサイルもあるんだ!」
「ああ、見たよ。この目でしっかりと。」
「どんなの?」
「暗くて、よく見えなかったけど、凄かったよ。」
「見たかったなあ…。小次郎、今のやつを捕まえに来たのかなあ?」
「たぶんな。」
「婆ちゃんが言ってたなあ。心の貧しい人は、心に虫が食ってるって。」
「そうかあ。虫がなあ〜…」
「僻み虫、妬み虫、恨み虫とか、言ってたなあ。」
「いやな虫だなあ。」
「人を呪わば穴二つ。とも言ってたよ。」
「人を呪わば穴二つ。か…」
「昔の人は、いろんなことを知ってたよなあ。」
「何もなかったから、心が大人だったんだよな。」
「どういうこと?」
「物があると、物に頼って、心を使わなくても生きて行かれるだろう。」
「あ〜、なるほどぉね!」
「なんだか空しくなってきたよ。」
「うん、どうして?」
「クローン人間の源(みなもと)が、あの程度の人間なんだなあと考えるとよ。」
「そういうことか。いろいろいるんだよ、人間は。ピンかキリまで。」
「そうだな。」
「それが人間なんだよな。」
「そういうことか。」
「嘆いても仕方ないよ。馬鹿には係わらないことだよ。」
「あんなのには、係わりたくねえよ。」
「それが利口だよ。」
「そうだな。」
「兄貴はクローンだから、人間が見え過ぎんだよ。」
「そうかもな。でもなあ〜、人間には愛は必要だよ。」
「え〜〜〜?」
「愛があってこその人間だよ。」
「どうしちゃったの、兄貴?」
「俺、変?」
「変だよ〜〜、気持ち悪いよ〜!」
「そうかなあ?」
「そ〜んなこと、今まで言ったことある?愛、とか!」
「無かったっけ?」
「無かったよ〜!」
「そうだったかなあ?」
「何かあったの?変な本でも読んだんじゃないの?」
「なにもないよ。」
ショーケンは、そっぽを向いた。
「あっれぇ?どうしたの兄貴?」
「何でもねえよ!」
ショーケンの脳裏には、クリスタル・ヨコタンの笑顔があった。



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