「兄貴、猿狩り小次郎だ!」 頭脳警察の追跡ヘリ・猿狩り小次郎は、遠くの山の上を旋回飛行していた。 「しつこいやつだなあ。」 「しつこいって?」 「さっきも来たんだよ。この上をな。」 「この上を来たの!?」 「ああ。さっき警報が鳴っただろう。」 「あれか〜。」 「で、どうなったの?」 「天軸山(てんじくさん)のミサイルで撃ち落すって脅したら、逃げて行ったよ。」 「高野山(こうやさん)には、ミサイルもあるんだ!」 「ああ、見たよ。この目でしっかりと。」 「どんなの?」 「暗くて、よく見えなかったけど、凄かったよ。」 「見たかったなあ…。小次郎、今のやつを捕まえに来たのかなあ?」 「たぶんな。」 「婆ちゃんが言ってたなあ。心の貧しい人は、心に虫が食ってるって。」 「そうかあ。虫がなあ〜…」 「僻み虫、妬み虫、恨み虫とか、言ってたなあ。」 「いやな虫だなあ。」 「人を呪わば穴二つ。とも言ってたよ。」 「人を呪わば穴二つ。か…」 「昔の人は、いろんなことを知ってたよなあ。」 「何もなかったから、心が大人だったんだよな。」 「どういうこと?」 「物があると、物に頼って、心を使わなくても生きて行かれるだろう。」 「あ〜、なるほどぉね!」 「なんだか空しくなってきたよ。」 「うん、どうして?」 「クローン人間の源(みなもと)が、あの程度の人間なんだなあと考えるとよ。」 「そういうことか。いろいろいるんだよ、人間は。ピンかキリまで。」 「そうだな。」 「それが人間なんだよな。」 「そういうことか。」 「嘆いても仕方ないよ。馬鹿には係わらないことだよ。」 「あんなのには、係わりたくねえよ。」 「それが利口だよ。」 「そうだな。」 「兄貴はクローンだから、人間が見え過ぎんだよ。」 「そうかもな。でもなあ〜、人間には愛は必要だよ。」 「え〜〜〜?」 「愛があってこその人間だよ。」 「どうしちゃったの、兄貴?」 「俺、変?」 「変だよ〜〜、気持ち悪いよ〜!」 「そうかなあ?」 「そ〜んなこと、今まで言ったことある?愛、とか!」 「無かったっけ?」 「無かったよ〜!」 「そうだったかなあ?」 「何かあったの?変な本でも読んだんじゃないの?」 「なにもないよ。」 ショーケンは、そっぽを向いた。 「あっれぇ?どうしたの兄貴?」 「何でもねえよ!」 ショーケンの脳裏には、クリスタル・ヨコタンの笑顔があった。
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