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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第122回   忍者隊・月光
照明に照らされたニート革命軍・人間村の看板の下には、もう白髪の老人の姿はなかった。
ショーケンは左右の道の彼方を見た。
「おっかしいなあ。今ここにいたんだけどなあ。」
アキラがやって来た。
「兄貴〜、何やってんの?」
「ここになあ、白髪のおじさんがいたんだよ。いなくなっちゃったよ。」
アキラも、左右の道を見た。
「帰ったんじゃないの?」
「そうなのかなあ…」
「じゃあ、川にでも落ちたんじゃない?」
「まさか。」
ショーケンは川を見た。聞こえてきたのは、せせらぎの音と虫の声だけだった。
「そんなに早く居なくなるわけがないんだけどなあ…」
近くの木の裏側から、老人が出てきた。
「兄貴、あそこにいるよ。」
老人は、ズボンのチャックを閉めていた。
「な〜〜んだ、小便か。」
遠くからサイレンの音が近づいていた。赤色灯を回転させ点滅させて近づいていた。
「兄貴、パトカーだよ。」
「こっちに来るみたいだなあ。」
大きな爆音が近づいてきた。暴走車だった。
「兄貴、暴走車だ!」
二人は危険を感じ、道の脇の小高い土手に登った。
道の反対側からも、パトカーがやってきて、二人の前をサイレンを鳴らし、赤色灯を回転させながら通り過ぎて行った。暴走車は、パトカーに挟まれ、止まった。パトカーのライトに老人が映った。
暴走車は、老人が歩いてる場所で止まった。老人は、びっくりして立ち止まった。
まるで、暴走車から猿の形相で猿のような奇声を発しながら、男が出てきた。そして、老人の腕を掴んだ。
追って来たパトカーは、暴走車の手前で止まり、もう一台のパトカーも止まった。警官が出てきた。パトカーには、高野山警察と書いてあった。
警官達が警棒を持って男に近づくと、男は刃物を取り出した。サバイバルナイフだった。男は叫んだ。
「近づくと、このじじいを殺すぞ!」
男は理性のない猿のように、警官を眼光鋭く睨み、叫んでいた。
腰を抜かしたのか、老人はその場にうずくまった。
警官は、飼育員が動物に接するような調子で問いかけた。
「ナイフを捨てなさい。そこにいるのは老人ですよ。可哀想じゃないですか。」
「可哀想〜?」
心のすさんだ男には意味が分からなかった。
「弱い者にたいしての、思いやりの気持ちはないのか?」
「おもいやり?」
心の病んだ男には、その言葉が理解できなかった。彼岸花を踏みつけていた。
「弱いものをいたわる気持ちはないのか?」
「そんなものは、ねえ〜!」
「おまえには、愛はないのか?」
「猿には、そんなものは、ねえ〜ぇ!」
その様子を、ショーケンとアキラは見ていた。
「猿に運転免許を与えるから、こういうことになるんだよ。」
「そういうことだよな。」
「猿に科学文明は刃物なんだよ。危険なんだよ。」
警官の一人が他の警官に命じた。
「しょうがない、忍者隊・月光を呼ぶか。」
他の警官は即座に答えた。
「了解!」
高野山の風は、いつものように吹いていた。


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