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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第121回   結界
物々しいエンジン音が近づいてきて、反対側の道路側の窓を、騒音を撒き散らしながら、車高の低い黒いゴキブリのようなクルマが、どっかんどっかんと通り過ぎて行った。
「姉さん、暴走車だ!」
「あ〜〜、ほんとだ!どたばたしやがって!」
サイレンを鳴らし、赤色灯を回転させたパトカーが後を追って、とっとこと通り過ぎて行った。
「姉さん、パトカーだ!」
「人間村の方に行ったね。」
「そうですね!」
「何だい、その返事は?」
「そうですね!」
「大丈夫か、おまえ?」
「少し電圧が落ちてきました。」
「だから、空元気になったんだな。」
「そうですね!」
「もう休んでいいよ。」
「まだ大丈夫です。」
「いいから、休んでろ!」
「はい!」
福之助は黙って壁際のコンセントの前に座った。で、胸を開けてプラグを引き出すと差し込んだ。
「姉さん、充電を開始します。」
「分かってるよ。」
「用があるときには、どこか触ってください。」
「分かった。スリープ状態ね。」
「はい。では、また逢うときまで。ごきげんよう、さようなら。」
「早く寝ろよ!」
「バッハッハァ〜イ!」
「なんだいそりゃあ?」
「きょん姉さ〜ん!」
「なんだよ?」
「寂しいでしょうけど。気をつけてね。」
「大丈夫だよ!」
「高野山には、結界が張られているから大丈夫ですよ。」
「けっかい?」
福之助は短い脚を伸ばして座ると、動きを止め目を閉じた。
「こいつ、高野山に来てから、なんだか変だなあ〜?」
アニーが福之助を見ながら、姉さんに尋ねた。
「福ちゃん、寝ちゃったんんですか?」
「はい。」
「福ちゃんは、人間の真似をして、人間に近づこうとしているんじゃないでしょうか?」
「人間の真似?」
「福ちゃん、結界って言ってましたよねえ。」
「結界って、何ですか?」
「高野山では、修行する場所に魔の障碍が入らないようにするため、結界が行われるんです。バリア空間です。」
「じゃあ、この辺りも?」
「はい。近くに弘法大師が眠っていますから、特に。」
「近くに?」
「はい。この丘の向こうです。」



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