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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第12回   時の過ぎ行くままに♪
龍次達の電動四輪自転車は、時速八キロくらいの速さで走っていた。
ショーケンが、龍次の顔を見ながら質問した。
「これ、どのくらいのスピードが出るの?」
「そうですねえ、せいぜい二十キロくらいかな。」
「これ、四人で同時に漕ぐと、かなり軽いねえ。」
「そうですね、かなり軽いです。」
「力いっぱい漕ぎたときにはどうするのかな?」
「そういうときには、誰かが充電モードで漕いで、充電します。」
「充電モード?」
「空漕ぎで充電できるんです。」
「ふ〜〜〜ん。」
ショーケンは振り向いた。後から、ニート革命軍の連中が、歩いてついて来ていた。ある者は色んな物を載せた半電動リアカーを引いていた。
「けっこう、多いんですねえ、みなさん。」
「毎月、数名増えてますねえ。」
「時々、変な人も来るんじゃないですか?」
「変な人と言うと?」
「たとえば、怠ける奴とか。自分勝手な奴とか。」
「ときどき勘違いして、来るのがいますよ。」
「どうすんですか?」
「一ヶ月様子を見て、追い返します。」
「やっぱりね。」
「われわれのニートは、権力に対するニートであって、生活ニートではありませんから。」
「そうなんだ。」
「小乗仏教みたいなものです。」
「しょうじょうぶっきょう・・」
ショーケンは、軽く頷(うなず)いたが、言葉の意味が分からなかった。
アキラは後ろで、お寺や景色を見ながら二人の話を何気なく聞いていた。
「やっぱ、インテリは難しいこと言うねえ。」
龍次は、アキラの顔を横目で見た。
「難しかった?」
「ちょっとね!」
通りすがりの、お遍路姿の二人が、お経らしきものを言い合いながら歩いていた。
『南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)!南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)!』
ショーケンは、初めて聞くお経だった。
「なんか、聞いたことのない、お経だなあ?」
「空海の、お経です。」
「くうかい?」
「ここはねえ、空海の聖地なんですよ。」
ショーケンには初めて聞く名前だった。
「くうかい…」
「有名な人ですから、知ってますよね〜、学校で教わりましたよねえ〜?」
「ああ、知ってます、知ってます!」
龍次は、独り言を言うように喋っていた。
「いつもここを通っていると、時間の重さと切なさを感じるんですよ。」
龍次は、小さな声で森の妖精にささやくように、ジュリーの<時の過ぎ行くままに>を歌いだした。

 あなたは すっかり疲れてしまい 生きてることさえ嫌だと泣いた〜 ♪
  壊れたピアノで 思い出の歌 片手で弾いては溜め息ついた〜 ♪

「ここを通るとねえ、なぜか、この歌が脳裏に浮かぶんですよ。」




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