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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第118回   カラクリ心理
「龍次さん。あんまり高いクルマや自転車に乗らないほうがいいわよ。」
「なんで?」
「最近、僻(ひが)む人が多いから。そういう人に知らないうちに憎まれるわよ。」
「そんなに高くはないよ。」
「そうかしら?」
「そんなこと気にしてたら、生活できないよ。」
「まあ、そうなんだけどさあ。」
「人間はね。僻(ひが)んだら負けなの。」
「僻(ひが)んだら負け?」
「つまり、金持ちは僻む貧乏人を見て楽しんでいるわけよ。」
「そうなの?」
「ああ、そうだよ。生かさず殺さずにね、楽しんでるわけ。」
「そぉおなんだ。」
「だから、顔に出しちゃあ、やつらの思う壺なんですよ。僻む人間を見て、心の中で喜んでいるんだよ。いやらしい連中なんだよ。」
「いやらしいわねえ。」
「そうなんだよ。金持ちは、いやらしいんだよ。」
「意地悪ねえ。」
「金持ちは昔から意地悪なんだよ。極端に言うと、それが生きがいなんだよ。」
「だから、どんなに苦しくても僻んだ顔をしちゃ駄目なのね。」
「そういうことなんだよ。」
「僻(ひが)んで暴走するやつもでてくるしね。」
「彼らを、それを待ってるんだよ。自暴自棄になって暴れまわることを、見て楽しんでるんだよ。」
「暴走を見て楽しんでいるの?」
「馬鹿が地団太踏んで暴れ回ってるのを見て、楽しんでるんだよ。警察に捕まったり、事故を起こしたり、怪我したりして損するのは、暴れてる連中だからね。」
「そういうことなのか。今、分かったわ。」
「今日の暴動だって、退屈しのぎの花火見物みたいに見ているんだよ。」
「期待通りの展開ってわけね。」
「そういうことだね。」
「人間の心って、いやらしいねえ。」
「こういうカラクリ心理は、歳を取らないと分からないよ。」
「からくり心理?」
「そう、からくり心理。」
「な〜るほどねえ。」
「それだけじゃないよ。」
「うん?」
「僻(ひが)んだら、みんなに虐(いじ)められて負けちゃうの。だから、絶対に僻(ひが)んじゃ駄目なの。どんなに苦しくても楽しい顔をして我慢するの。格闘技と同じだよ。弱いところを見せたら、そこを攻められるだろう。」
「なるほっどね。」
「人間も動物だろう。本能的に僻(ひが)んでる弱いものを虐(いじ)めるんだよ。」
「動物と同じなの?」
「弱いってのは、精神的に弱いっていう意味だよ。動物はね、本能的に群れについていけなかったり、乱す我侭(わがまま)なものは追いやったり、みんなで殺したりするんだよ。自分たちの群れを守るために、協調できないものは容赦なく殺すんだよ。」
「そうなんだ。」
「僕はね、男も女も、僻(ひが)む人間は嫌いなの。」
「わたしも嫌い。」
「自分ではちっとも努力もしないで、優れた人間を見ると僻む、優れた人間の悪口を言う。そういう人間は、人間のクズだね。」
「わたしも、そう思うわ。」
「これは、きっと動物の本能だな。」
「じゃあ、わたしもそうなのかなあ。」
「人間の心には人間の心を見る能力があるんだよ。」
「やっぱり、龍次さんはインテリだわ。そこらへんのボンクラとは、言うことが一味違うわ。」
「一味?」
「ひょっとしたら、二味かな?」
「二味にしてよ〜〜〜!」
龍次は笑っていた。


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