きょん姉さんは、きょとんとしていた。改めて尋ねた。 「何かあったんですか?」 管理人と称する者は、管理人らしく答えた。 「暴動が起きているんですよ。詳しくはテレビを見てください。今やってます。」 「はい!」 「福之助、テレビを点けて!」 福之助は「はい。」と言って、テレビを点けた。 管理人が福之助を見た。 「ロボットが、一体いるんですね。」 姉さんが答えた。 「はい、そうです。」 「何かあったら、赤電話で連絡してください。これです。」 管理人は、ドアの隣の木箱を指差した。 「この中に入ってます。」 開けてみせた。 「電話の下にあるボタンは緊急用のボタンです。これを押すと誰かがやってきます。」 姉さんは、睨んで確認するように見た。 「分かりました。」 「何か疑問などがありましたら、この電話を使ってもいいですよ。」 「はい。分かりました。」 「それでは、気をつけてください。」 「はい。わざわざありがとうございます。」 管理人は、軽く会釈をすると去って行った。 テレビでは、大阪駅が燃え、近くの交番が暴徒によって襲撃されている様子が放映されていた。 「何、これ?」 アニーもベッドから身を乗り出して見ていた。 「暴動だわ。」 テレビでは、新宿駅が燃え、電車が燃えていた。 姉さんは驚いた。 「新宿駅が燃えてるわ。何が起きてるの!?」 新宿駅は、まるで龍が天に昇るように赤く染まって燃えていた。 頭脳警察の巨大な最強治安ロボット・ハルが鋭い金属音で唸りながら、理性を失い欲望の猿と化した暴徒たちを追っていた。 姉さんは、テレビに向かって声を発した。 「ハルだわ!」 福之助も、思い出したように声を発した。 「ハルだ!」 ハルの発する超低音ドラミングは、レッド・ツェッペリンの移民の歌だった。超低音ドラミングで、暴徒たちは平衡感覚を失いよろけていた。 姉さんは、夏の出来事を思い出していた。 「移民の歌だわ!ボーナム・ドラミングだわ!」 アニーが姉さんに尋ねた。 「何ですか、それ?」 「あれを、あの音をあびると、内耳の平行感覚がやられるの。立っていられなくなるのよ。」 「経験したんですか?」 「ええ、凄かったわ。まったく立っていられなくなるの。」 アニーは、テレビに映り出されているハルを、食い入るように見ていた。 「あれが、ボーナム・ドラミング…」 突然、天軸山(てんじくさん)の方向からアナウンスが流れた。
< 高野山上空内に許可なく入れば 直ちにミサイルで撃ち落とす! >
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