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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第116回   猫も杓子も大騒ぎ
インターネット喫茶の窓の外では、女性が小さなキャリーを引いてやって来て。甲高い声で叫んでいた。
「絞りたての、青森のリンゴジュースはいかがですか〜!」
泣きそうな声だった。幾人かの通行人はびっくりして立ち止まっていた。
「絞りたての、青森のリンゴジュースはいかがですか〜!」
たまりかねた通行人の男が、彼女に近づいて買い求めた。
「いくら?」
「二百円です。」
彼女は、大きな取っ手のついた容器に入った液体を、紙コーップに注いで通行人の客に渡した。
「ありがとございま〜す!」
「うん、なかなかおいしいねえ。」
もう一人、上品そうな女性の客がやってきた。
「お一つください。」
龍次は検索を中断して、その様子を上から見ていた。
「ああいう売り方って、反則だよなあ。」
蝶子も見ていた。
「泣き叫びながらじゃあ、同情して買うわよね。」
「女って凄いなあ。必死になったら何でもやるんだなあ。」
大きな女の声が聞こえた。
「社会に甘えてんじゃないわよ!」
韓国訛りだった。
「仕事から帰ってきたら、酒飲んでテレビを見て、ごろ寝。仕事することが、そんなに偉いの?」
男は酔っていた。ふらついていた。
「甘えてる?」
「そうよ。日本人の男は、平和な世の中に甘えてるわ!韓国は徴兵があるのよ。男は戦争に備えて、もっとしっかりしてるわ。」
「あ〜〜〜、分かった分かった!」
男は逃げて行った。
蝶子は、龍次のパソコンを覗いた。
「早く、自転車を検索してよ。」
「あっ、そうか。何て検索すればいいの?」
「折りたたみ自転車。」
「分かった。」
検索は早かった。
「出たよ。」
「どれどれ…」
蝶子は龍次の前のパソコンを覗いた。
「写真を大きくして。」
「はいよ。」
「赤いのがいいわ。」
「これ、十六インチだよ。大丈夫?」
「材質は?」
「アルミフレームで、八万円。」
「八万円かあ…」
「どうしたの?」
「八万も出すんだったら、電動があるんじゃない?」
「折りたたみで、あるの?」
「あるわよ。友達が乗ってるもん。」
「じゃあ、再度検索!電動、折りたたみ…」
検索は早かった。
「出たよ。」
「ほ〜〜ら、あるでしょう。」
「でも、ちょっと高いよ。」
「これいいわねえ。赤いの。」
「十二万…」
「二万くらい、おまけしてよ〜。」
「…しょうがないなあ、じゃあ条件付で。」
「まぁた?」
「来週の日曜日に手伝ってくれる。」
「えっ、何を?」
「レンタル畑の周りに、垣根を作るんだよ。それを手伝って欲しいんだよ。」
「…重労働?」
「ううん、いたって軽作業。」
「じゃあ、いいわよ。」
「細かい仕事が多いんで助かるよ。」
窓の下の通りに、暴徒が逃げこんで来た。警官が追って来た。通りは大騒ぎになった。




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