蝶子はパソコンに向かった。 「そうだ。インターネットの辞書で調べようっと。」 「あっ、それがいいね。」 「なんだっけ?」 「自(おの)ずと…」 「おのずと…」 「自分の自って書くんだよ。」 「あら、変換したら、自って出たわ。ってことは、自(じ)ずとってこと?ますます分かんないや。」 「調べたら分かるよ。」 「でました〜〜〜!ひとりでに。自然に。」 「そうだよ〜。」 「そういうことか。でも、どうして自って書くんだろうね?」 「つまり、自然の自だよ。」 「なるほどぉ。」 「分かってくれて、良かった!」 「さっきの、レンタル畑だっけ?」 「そう、レンタル畑。」 「誰もやってないの?」 「田舎の農家に行くとやってるよ。でも、遠いんだよ。歩いて気楽に行ける距離じゃないんだよ。」 「ああ、そうだね。ちょっとおっくうだね。」 「人間ってねえ、はじめは元気でも、だんだんと続かなくなるんだよ。田舎に憧れて行っても、一週間くらいすると都会の便利さに戻りたくなるだろう、あれと同じだよ。」 「そ〜うだね。それはあるね。」 「で、近所の農園って発想になったわけよ。」 「ちゃんと、先を読んでいるんだ。」 「そういうこと。」 「どこにあるの?」 「僕ん家の近くだよ。」 「その畑って、なんにもしてないの?」 「どういうこと?」 「雑草とかさ。」 「草刈りはしてあるよ。」 「石ころとかあるでしょう?」 「それはやってない。」 「どうして?」 「そこがいいとこなんだよ。土作りから始めて、畑ができた時の感動があるんだよ。」 「そうなのかなあ?」 「都会の人はね、全てが未経験だから、そういうことを喜ぶんだよ。」 「で、石コロはどけないことにしたんだ?」 「そういうこと。」 「身体を使って、いい汗流して、いいかもね。」 「本格的に農作業やってるわけじゃないから、汗なんか流さないよ。」 「そっか。」 「やってみたいの?」 「近所のおじさんがね。小さい頃は農家でね、思い出したように畑でもやってみたいなあ〜って言ってたんだ。」 「そういう人もいるんだねえ。」 「これからは、年寄りが増えるからいいと思うわ。」 「そうなんだよ。」 「老人も健康になって、医療費も削減できるわ。」 「なかなか勉強してるじゃん!」 「どんなに忙しくても、ニュースだけは見てるわ。」 「ニュースだけは見てたほうがいいよ。世の中、どんどん変わっているから。」 「そうなんだよね。」 「蝶子ちゃんも、ちゃんとニュースを見てるんだ。安心したよ。」 「ニュースだけは、ちゃんと見てる。」 「よかった。」 「レンタル畑は名案だわ。きっと、大臣から表彰されるわ。」 「え〜〜?」 「だって、世の中を助けているんだもん。」 「そういうつもりでやってるんじゃないんだけどね。」 「どんどんやったらいいわ。」 「どんどんやるよ。」 蝶子は、龍次のパソコンを覗いた。 「早く、自転車を検索してよ。」 「あっ、そうか。」
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