20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第110回   猿狩り小次郎
二人が歩いている前から、背番号13の男がやって来た。首にmp3プレーヤを下げていた。
クリスタル・ヨコタンは軽く会釈した。
「こんばんわ。」
男は軽く手を上げて、
「ポ〜〜ン!こんばんわ〜!」
と言って、去っていった。
ショーケンは、彼の後姿を追いながら、呟いた。
「ポ〜〜ンって何ですか?」
「さ〜〜ぁ?、あの人いつも、ぽ〜〜んなんですよ。」
「何なんでしょうね?」
「龍次さんも、何だろうねって言ってました。ポーンは、チェスの歩兵のことだけどねって言ってましたけど。」
「不思議だなあ。」
「高野山(こうやさん)って、不思議なことが多いんですよ。」
「あの人、どこから来たの?」
「いつも、団地の方から来るんですけど。分かりません。」
「高野山(こうやさん)に団地ってあるんですか?」
「町営の団地がありますよ。」
「ふ〜〜ん、けっこう高野山って、人がいるんですね。」
「約五千人、住んでいます。」
「そんなにいるの?」
「はい。」
「あの人、首にかけてたやつ。あれ、何とかプレーヤと言いましたよね。」
「mp3プレーヤです。」
「あれ、流行ってるんですか?」
「そうですね。あれ、いいんですよ。軽くて、ジョギングとかに。」
「なあるほど。」
「音もぶれないし。」
「なあるほど。」
「欲しいんですか?」
「なんとなくね。どこで売ってるの?」
「インターネットです。店では、あまり売っていません。」
「どうして?」
「安い品物は、利益が少ないから、あまり売りたがらないですよ。」
「なあるほど。あんなに小さいと、万引きされるしね。」
「そうですね。そういう理由もあるのかも知れませんね。」
二人の歩いている前方から、案山子(かかし)を担いでやってくる人間がいた。甲賀忍だった。
ヨコタンが声を掛けた。
「忍さん、なにやってるの?」
「案山子(かかし)を立てに行くんですよ。」
「こんな時間にですか?」
「せっかちなもので。」
甲賀忍は懐中電灯を持っていた。
「気をつけてね。」
「近くですから、大丈夫です。」
突然、ヘリのローター音が聞こえた。三人は上空を見上げた。
遠くの山から、ヘリが飛んでくるのが見えた。両脇にミサイルを抱えていた。ショーケンが声を発した。
「頭脳警察の治安用攻撃ヘリ・猿狩り小次郎だ!」
「何かあったのかしら?」
突然、高野山の防空サイレンが、けたたましく鳴り出した。転軸山のミサイルハッチが開き、ミサイルが頭を出した。
甲賀忍が転軸山の方向を指差した。
「地対空ミサイル・アイアンメイデンだ!」
ミサイルは回転して、猿狩り小次郎に照準を合わせた。上空に向かってアナウンスが流れた。

 < 高野山上空内に許可なく入れば 直ちにミサイルで撃ち落とす! >



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32722