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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第107回   命をかけて
「ショーケンさんは、本物のショーケンさんでもないのに、どうしてそんなに彼のことを知っているのですか?まるで同じ環境で育ったみたいに?」
「クローンとして産まれたときから、生活をプログラムされて、ほぼ本物と同じ環境で育てられたんです。」
「完全にですか?」
「それは無理です。半分程度です。」
「自由とかはなかったんですか?」
「それなりの自由はありました。束縛があるから自由があるんですよ。」
「束縛があるから自由がある…」
「自由ばかりだと、自由に束縛されて退屈地獄になります。」
「自由に束縛…、面白いわ〜、それ!」
「束縛から開放されて、そこで自由は生まれるんです。」
「なるほど〜!」
「人は皆、自由の刑に処せられている。サルトルの実存主義ってやつですよ。」
「サルトル…」
「あなたが知らないんですか?」
「知ってますけど、どういう思想かは知らなかったです。教養程度です。」
「十六歳くらいのときに、哲学の先生がいましてね、その方に教わったんですよ。」
「あなたの哲学は、その方にあるんですね。」
「半分くらいは。」
「その方の名前は?」
「極秘の施設なので本名は分かりません。みんなは、毬藻先生と呼んでいました。」
「まりも先生…、まりもって、あの阿寒湖の毬藻ですか?」
「はい。」
「う〜〜ん、そういう考え方は初めて聞いたわ。」
「先生は、人は歳に応じてやらなければならないことがある、とも言ってました。」
「歳に応じて?」
「命をかけて。」
「命をかけて?」
「その年齢でしかできない大切なことがあると。それを怠ると、年取ってから大きな苦しみがやってくると。」
「絶望とかですか?」
「そういう意味です。」
「でもどうやって、それが分かるんですか?誰も教えてくれる人はいないのに。」
「人生を懸命に生きている人には、直感で分かるんだそうです。」
「う〜〜ん。そうかも知れないわ。」
「どうしてですか?」
「わたしが、今までそうだったから。」
「じゃあ、ここに来たのは、その直感的にですか?」
「そうなんです。私の中の何かがそうさせたんです。」
「全ての地位を捨てて?」
「そうです。ほんとうの自由になりたくて。命をかけて。」


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