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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第105回   僻みロボット
「また、変なことを知らない人に質問するんじゃないよ。」
「変なことって?」
「人間は何のために生きてるか、っとかさ。」
「分かりました。」
「人間はね、死んだらおしまいだから生きるの。分かった?」
「分かりました。なあんだそんなことか!」
「なあんだとは、何だよ?」
「もっと難しいことかと思ってました。なあんだがっかり!」
「がっかりとは、何だよ。」
「ただ生きているだけなんだ。」
「…そうだよ。」
「そして、ただ死んで行くだけんだ。」
「…そうだよ。」
「人間って、思ってったよりも単純なんですね〜。」
「単純で悪かったね。」
「あ〜〜あ、つまんないの。」
「つまんない?」
「ロボットに、つまんないなんて言われたくないよ。」
「どうせわたしは。ポンコツロボットですから。」
「おまえ、ここに来てから、変だよ。僻みロボットになってるよ。」
寝ていたアニーが上体を起こした。そして、右手で福之助を指差した。
「僻みロボット、ここにあり〜!」
姉さんは、びっくりした。
「どうしたんですか、アニーさん?」
「あらっ、わたし、いったいどうしたんでしょう?」
「まだ、熱があるんじゃないんですか?」
「そうみたいね。」
「ほんとうに、大丈夫ですか?」
「きっと、わたしの寂しがりやの潜在意識が、そうさせたんだわ。」
「アニーさんは、寂しがりやなんですか?」
「きっと、あなたたちの愉快な会話に加わりたかったんだわ。」
突然、外からガタンと大きな物音がした。窓の方からだった。
姉さんは窓を見た。
「何、今の!?」
福之助が、窓際に行って、窓の外を見廻した。
「何もいませんよ。」
姉さんも窓際に来た。そして、同じように見廻した。
「ほんとだねえ…」
福之助は、暗視眼に切り替えた。
「やっぱり、何もいませんねえ。」
「何かが落ちたような、ぶつかったような音だったねえ。」
「そうですねえ。」
「高野山の幽霊かなあ?」
「幽霊は物音なんか立てませんよ。」
「そうだねえ…」
「あっ、聞こえます!」
「何が?」
「幽霊音です!」
「幽霊音?」
「人間の耳には聞こえない音が聞こえます。」
「それが、幽霊音?」
「はい、人間の耳には聞こえない音を、幽霊音と言います。」
「どんな音なんだい?」
「だから、人間の耳には聞こえない音なんです。」
「うん?どういうことだい?」
「つまり、超音波です。人間の耳に聴こえるのは、二十から二万ヘルツの音です。それ以上、それ以下の音を超音波と言います。または幽霊音と言います。」
「ああ、そうなの。じゃあ、おまえは凄いねえ。その幽霊音が聞こえるんだあ。」
「はい。」
「おまえは、ポンコツなんかじゃないよ。」
「ありがとうございます。」
「で、どんな音なの?」
「だっかさあ、人間には聞こえない音なんですよ。分っからない人だなあ〜!」
「無理に言ってごらんよ。」
「そんなことできませんよ。」
「色で言うと?」
「色で?音をですか?色で?」
「どんな色だい?」
「無理です。音を色に変換することはできません。わたしの能力では。」
「奥の手で!」
「奥の手?そんな手はありませんよ。わたしは化け物じゃありませんから。」
「化け物?何のことだい?」
「右手と左手以外にはありません。」
「どういう意味?あんた、ときどき変なこと言うね。」
「姉さんこそ。」
姉さんは、福之助に向かって手を合わせた。
「そこんとこをなんとか!」
福之助は、姉さんの不意の行為に一歩下がった。
「なっ、何ですか!?」
姉さんは、手を合わせて再度お願いした。
「おねがい!」
「わたしは、お地蔵さんじゃないんですよ。」
「おねがい!」
「いったい何の真似ですか?駄目なものは駄目です。」
「まあったく、ポンコツだなあ。」
「どうせ、わたしはポンコツですよ!」
「あ〜〜〜あ。」
「あ〜〜あ、とは何ですか?失礼じゃないですか。」
「不可能ってことかあ。」
「分かりました。」
「何が?」
「だったら、無理に答えましょう。」
「ほ〜〜?」
「色に例えると…」
「例えると…、楽しみだなあ、どんな答えが出るのかなあ?」
「人間には見えない色です。」
「な〜〜〜んだよ!」
「聞こえない音は、見えない色になります。」
「た〜〜〜、まいった!」
「どうやら、わたしの勝ちですね?」
「何だい、勝ちとは?」
話をしながら、福之助は窓の外を暗視眼で見ていた。


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