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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第103回   秘密の合言葉
「でも、おかしいなあ。」
真由美ちゃんの母親は、いたって冷静になっていた。
「若いわ、あなた。」
ショーケンは、不気味に微笑んでいた。
「ありがとうございます。」
「そういう意味じゃなくって、若すぎるってことなの。つまり、本物のショーケンじゃない。」
「…実はそうなんです。そっくりさんなんです。」
「それにしても、良く似てるわねえ〜。」
真由美がショーケンのそばに寄ってきた。
「どうしたら、そんなにかっこよくなれるの〜?」
「そんなには、かっこよくないよ〜。」
「かっこいいわ〜。」
「なんか教えてよ。」
「何を?」
「歌。」
「僕の歌?」
「そう。」
「そうだなあ…、どんなのがいいの?」
「そうねえ、楽しい歌。」
「楽しい…」
「わたしでも歌える歌。」
「真由美ちゃんって言ったよね。」
「そうよ。」
「真由美ちゃんは、どんな歌が好きなの?」
「楽しい歌。」
「なんだよ。さっきと同じこと言ってるよ。」
「そうよ〜。」
ショーケンは笑った。真由美は手を叩いて喜んだ。
「わ〜〜、かっこいい〜!」
「笑っただけだよ。」
「笑い方が、かっこいい〜。」
「しょーがないなあ。そうだなあ…」
ショーケンは腕を組んだ。
「うわ〜、悩むところがかっこいい〜!」
「いちいちいちいち、何もできなじゃないかよ。」
「若いときの歌がいいわ。」
「若いときのね…、楽しいやつか…、そうだなあ、秘密の合言葉かな?」
「それ楽しいの?」
「まあ、楽しいのかなあ?」
「ちょっとだけ、歌ってみてよ。」
「ちょっとだけじゃなくって、ちゃんと歌うよ。」
ショーケンは歌いだした。

 3(すりー) 2(つー) 1(わん) お〜イェ〜 ♪
 二人がいつも〜 逢うときは〜 これが秘密の合言葉〜 ♪

真由美が叫んだ。
「それ、教えて〜ぇ!」
「じょあ、ここまでね。」
「おねがいしま〜す!」
「はい。」

 3(すりー) 2(つー) 1(わん) お〜イェ〜 ♪
 二人がいつも〜 逢うときは〜 これが秘密の合言葉〜 ♪

「はい、歌って。」
真由美とショーケンは、一緒に歌いだした。真由美は勝手に歌いながら踊りだした。歌い終わると、踊りも止まった。
「はい、この次!」
「真由美ちゃんは、踊りが上手だねえ。」
「そうかしら?」
「誰に習ったの?」
「お父さん。」
「お父さんは、まだ帰って来ないの?」
「お父さんは、もう帰って来ないの。」
少女は急に悲しい顔になった。
「うん、どうして?」
「天国に行っちゃったの。」
少女は泣きそうになったが、ショーケンの顔を見ながら必死に我慢していた。
「…真由美ちゃんは、お父さんっ子だったんだな。楽しいお父さんだったんだ。」
「うん!酔っ払って、いつも踊りながら歌うの。」
「どんな歌?」
真由美ちゃんは歌いだした。それから踊りだした。

 通りゃんせ〜 通りゃんせ〜 ♪
  行きは良い良い 帰りは酔っぱらい 酔っぱらい ♪

「昨日、お父さんの夢を見たの。」
「どんな夢?」
「夕焼けに向かっていなくなっちゃうの。追いかけても追いかけても、いなくなっちゃうの…」
ショーケンの目は、少し涙で潤んでいた。
「だからね、夕焼けこやけの歌を歌うと、悲しくなっちゃうの。」
「そうか…」



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