「おもしろいねえ。」 上から龍次の声が、ぽたんと落ちてきた。 アキラと紋次郎は見上げた。龍次と鶴丸隼人が立っていた。 「タイヤ直ったよ。」 「さすがアキラさん。どうもありがとう。時間外手当にしておきますよ。」 「なにそれ?」 「残業手当ですよ。」 「ああ、そう。どうも。」 「やってますねえ。アキラさん、やばいんじゃないの?」 「そ〜うなんだよねえ。まいっちゃったよ。」 紋次郎は盤面を見ていた。目だけが全てを透視するように不気味に青く光っていた。 「王手!もう、終わりですよ。」 アキラは、悟った。 「いや〜〜、まいった!」 文字通り、将棋盤に駒を投げた。 「おまえ、強いねえ〜。」 「どういたしましてでござんす。」 「なんだいそりゃあ?変な挨拶。」 上から龍次の声が、ぽたんと落ちてきた。 「よぉ〜〜〜し、わたしがやろう!アキラさんの敵討ちだ!」 紋次郎は龍次を見た。 「敵討ち?せっしゃが敵(かたき)でござるか?」 「人間の敵討ち!」 「人間の論理思考では無理です。感情が入りますから。」 「さ〜〜、どうかな?」 「無理です、無駄です。いくら保土ヶ谷さんでも。」 「人間には、ロボットよりも優れたものがあるんだよ。」 「それは、何ですか?」 「直観力!」 「直観力?」 「第六感ってやつだよ。」 「だいろっかん?」 「人間や動物の直観力はね、へなちょこの理屈よりも凄いんだよ。」 「へなちょこ?わたしのCPUがですか?」 「論理ってやつだよ。」 「保土ヶ谷さんは、とても面白いことをいいますねえ。」 「いざ、勝負!」 アキラは立ち上がった。 「敵討ち頼むよ!」 「まかしといて!」 そこに、龍次が座った。 駒を並べ終えると、龍次は軽く頭を下げた。 「おねがいします。」 紋次郎も頭を下げた。 「おねがいします。」 一人の男の隊員が飛び込んできた。 「先生、大変です!」 「どうした?」 「新宿が暴動で燃えています。」 「暴動で燃えてる?」 「新赤軍でも蜂起したのかね?」 「違います?ガソリン猿人たちがガソリンを求めて暴れているんです。」 「ガソリン猿人たちが?今、テレビでやってるの?」 「はい。」 「誰か、テレビをつけてくれ!」 ニート特攻隊の鶴丸隼人が、作業所の壁に取り付けられてあるテレビを点けた。
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