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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第101回   南無大師遍照金剛
龍次は、目玉を上に向け考え込んでいた。
「ひょっとしたら、あの子かなあ…」
「龍次さんって、いろんなところに友達がいるんだねえ。つまり、人畜無害ってことかな?」
「なんだよ、それ?褒めてんのかよう?」
「褒めてるよ。」
「変な褒め方だなあ。」
「これ、返信しないでいいの?」
「後でするよ。帰ってから。」
彼女は、バッグの中からポリ袋を取り出した。
「食べる?田中製菓のクレソンせんべい?」
「クレソンせんべい?」
「龍次さん、クレソン好きでしょう。」
「良く知ってるねえ。」
「親戚の人が作ってるの。」
「その田中製菓?」
「はい。ピリっとして、六角形で、とってもおいしいんですよ。」
彼女はポリ袋を破って中を見せた。
「ほんとだ、六角形だ。」
「どうぞ。」
龍次は、一つ取った。そして、口の中に入れ噛み砕いた。
「うん。いい味してるねえ。」
「そうでしょう。」
「どこで作ってるの?」
「田中製菓って言ったじゃない。」
「あっ、そうか。」
「ハイテク案山子(かかし)、いい内職ねえ。」
「どうして?」
「龍次さんはドライブが好きでしょう。ドライブしながらできるじゃない。」
「ああ、そうだね。」
「わたし、転職を考えてるんだけど、楽な仕事ないかなあ?」
「どんなあ仕事がいいの?」
「頭を使わない楽な仕事。」
「じゃあ、主に身体を使う仕事?」
「そうね。それがいいわ。」
「そりゃあ無理だよ。」
「なんで?」
「どんな仕事でも、頭は使うよ。遊びじゃないんだから。」
「そうかしら?」
「そっうだよ。どんな単純な仕事でも頭は使うよ。」
「お掃除でも?」
「そうだよ〜。頭を大いに使わないと、効率的には掃除はできないよ。」
「…そうだね。」
「何だってそうだよ。頭を使わない仕事なんてないよ。」
「そうなんだよねえ〜。」
「そういうこと。」
「そう言えば、田中製菓の社長も、同じことを言っていたわ。」
「さすが社長!伊達に社長はやってないね。」
「肉体仕事は、手先を使うから、知識よりも知恵が必要なんだよ。」
「そういうことか。」
「焦らないで探したほうがいいよ。焦るとろくなことはないよ。」
「そうですね。」
彼女は軽く溜息をついた。
楽器を持った人たちが入ってきた。五人だった。メンバーたちのコスチュームの背中には、南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)とプリントしてあった。
彼女は驚いた。
「根来衆(ねごろしゅう)バンドだわ!」
「えっ!?」
彼らは、二人の席に近い窓際の席に座った。茶髪の男が携帯電話を取り出した。
「連絡だけしとくか?」
隣の男が頷いた。
「そうだな。」
茶髪の男は携帯電話のボタンを押した。そして小さな声で話し出した。
「チェックメイトキングツー、チェックメイトキングツー、こちら卍根来(まんじねごろ)エイト…」




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