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作品名:真夏の夜。 作者:さくら☆りんご

第1回   1
優雅なひとり暮らしと言えば聞こえはいいが、実はこのマンションは離婚の慰謝料の一部だったりする。

眼下に見降ろすのは眠らない街トウキョウのネオン。
わたし、葉山倫子が住むこのマンションは都心ど真ん中の高層マンションの最上階。
うん。
自分でも優雅な眺めだなぁーと、つくづく思う。



離婚したのは一年前。
彼の浮気だった。
相手の女のコが妊娠して堕ろせなくなってからカミングアウトしてきた。
当時のわたし32歳。元ダンナ、35歳。 彼女、24歳。

妊娠を聞かされた時はエイプリルフールだったっけ?かと思った。
残念ながら現実だったけど。

わたしたちは子どももいないし、事もあろうに義両親からこれ幸いにと言わんばかりに離婚の手続きへと進んだ。
義両親が孫を切望していたのは良く知ってる。

元ダンナは聞けば誰でも知ってるような大企業の跡取り息子。
そもそもが、わたしたち釣り合いが取れてない夫婦だったのかもしれない。
わたしは出版社に勤務しているので、財閥系やらなんらエラそうな肩書きを持つ一般人ならそうは出会わないであろう人間に出会う機会が山ほどある。

元ダンナもまさにそのひとりだった。

元ダンナが出版した本の記念パーティで知り合い、猛烈なアタックを受け翌年結婚。
わたしも当時29歳で三十路前で周りが結婚ラッシュで崖っぷちというのもあったし、強引なまでに結婚を迫られ悪い気がしなかったのも事実。


結婚してしばらくは平穏な生活を送っていた。
でも、しばらくしたある日から義母より孫の催促が始まった。
今思えばここから少しずつ歯車がズレ始めていたのだと後になって気づく。
義母は専業主婦として義父に仕えてきた女性なので、結婚後も働くわたしの気持ちが理解しかねるようだ。
もちろん、わたしも子どもを産みたくなかったわけじゃない。
ただ、仕事との兼ね合いを考えると今じゃないと思っていただけ。

社内で実力が認めてもらえるようになりポストを与えられ落ち着いた所で、赤ちゃんを‥と考えた矢先に元ダンナの浮気相手が妊娠。
しかも22週を超えていたため堕ろすこともできず‥。
かといって、わたしだってはいそうですかと納得なんてできない。

義両親は孫の催促をしていたぐらいだから、当然わたしの味方になるはずもなくあっけなく離婚へと進んだ。多額の慰謝料と結婚する際に購入したこのマンションの権利を譲渡してもらった。
もちろん、彼女にも慰謝料を請求した。恐らく元ダンナが用立てたのだろうと察しがつく。

元ダンナの浮気の理由。
わたしがかまってくれなかったから。
浮気相手の彼女は、元ダンナの会社の秘書課のコだった。
可愛いくて、色白で、控え目な印象。
実際には見た目とは裏腹のしたたかな腹黒女だったけど。
なんせ、堕ろせなくなるまでだまっていて横取りしたんだからね。




ピンポーン。


チャイムが鳴った。
ふと、玄関のモニターを覗くとそこには見覚えのある男の顔が映し出されていた。
彼はわたしの部下として今年ニューヨークから赴任してきた、斎藤歩。
留学中にニューヨーク支店でバイトを始め、そのまま大学を卒業してニューヨークしてに配属になったという経歴の持ち主。
年は28歳。気も付くし、フットワークも軽くテキパキと仕事をこなす。
バスケをやっていたらしく背も高く、顔立ちもカッコいい部類に入るだろう。

「葉山さん、いるんでしょ?開けて」








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