コリントスのホテルでも軽く迷う。シャワーを浴びた後、部屋がわからなくなって頭にタオル巻いて着替えを抱えて右往左往。やっと部屋の番号を見つけて、Yにバレ無い様に平静を装って部屋に入る。 「遅くなってゴメン、お湯でたよ〜」 みたいな。 ……そろそろ疑問に思う人もいるかもしれない。 「なぜホテルでトイレやシャワーに行くのに迷うの?」と。 そう思った人はきっとリッチな旅をしている人だと思う。部屋にシャワーもトイレもついてたでしょ? 私達が泊まっていたようなホテルにはそんなもん無い。何部屋か、下手したらそのフロアで共同だ。真ん前の部屋に当れば、いくら私でも迷う事なんか無い。だか、微妙に角を曲がらなきゃいけなかったり、二・三部屋ズレてるとヤバイ。私はその場でくるくる回されただけで、自信を持って反対に歩ける。生まれ故郷である京都でも迷子になれる人だ。碁盤の目なのに。
この夜の悲劇(?)はこれではない。本当の迷子になったのだ。私でなく相棒が。 ちなみにYではない。彼女は決して単独で迷子になどならない賢者だ。 大事なスケッチブックがぁ〜! 無いよぅ! 下手な建物スケッチをしていたやつでなく、今、この文の元になっている、漫画形式で出発時から絵日記を残していたものである。巻頭のエピソードはもう一冊のヒミツのおこづかい帳に書いてたのでYは知らなかったろう……時効だ。いや、それどころじゃないんだ。 港近くのベンチでおやつ食べてひとしきり凍えて、夕方は地元のタベルナで美味しく食事を頂いて、結構ご機嫌でホテルに帰った。お湯がちゃんと出そうなシャワー浴びる前に、Yは出納帳、私は日記の続きを描こう……って無いしっ! 日本から一緒にず〜っと旅を記録してきたかわいいかわいい相棒だ。 ……ってか、中を見られたらとても恥ずかしい。 間違えて日本人観光客にでも拾われてごらんよ! 旅の恥はかき捨てっていうけど、いい笑いもんだぜ? 3頭身とはいえシャワーシーンもあるよっ! ……。 親切なYは、寒い夜の町を今日行った道をもう一度一緒に探してくれた。本当に優しい人だ。いや、君の「よだれ寝顔」も漫画にかかれてたからな。 そして……見つけた。 夕食を食べた店の中で、おじさん達に回し読みされ、爆笑されていた絵日記を。 ……地元の人でよかった。日本語読めない人達で。でも笑ってるぞ。絵と私達を交互に指差して 「あ〜こいつらだ〜」←ニュアンス みたいな事言ってるよっ! ……わかるんだね、国が違っても絵だったら。恥ずかしいがある意味感動だ。 相棒は無事返ってきた。ってか、置き忘れてゴメン。 ああ……なが〜い一日だった。 で、頭に戻って、温かいシャワーを浴びて最後に軽く迷って寝たんだ。 先日そこそこ迷ったので晴天の次の日は、コリントスの素晴らしい遺跡を見て、またアテネに戻った。結構無難な一日だったのであえて書かない。バスも少しはマシだった……はずだ。 ……いや、コリントスが無難すぎたのかもしれない。迷わなかったら雨ふったよね?
そう、次の日見事に悪天候に見舞われ、二人はマジで凍えた。 結構なメインイベントに予定してた憧れのスニオン岬は、みぞれか雹かアラレかわからん何かが、おもいっきり降ってる極寒の地だった……
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