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作品名:方向オンチにしか見えない世界 作者:錦小路真理

第14回   ローマをどうでもいいと思うワケ
 ああ……フィレンツェの日程も終わり。
 またいつお湯の出ないホテルに当って、風呂に入れなくなるかわからないんで(切実)とりあえず朝一でシャワーを浴びてチェックアウト。
 母似のおばちゃんお世話になりました。
 駅に荷物預けて身軽になって、列車の時間まで最後のフィレンツェ観光。
 サンタマリア・ノヴェッラ教会でリッピのフレスコ画……と思っていたが修復中。ちっ。
 ガイドブックにはあったのに、何度探しても見つからなかったドゥオーモ美術館の入り口は、意外にもホテルへの行き帰りにいつも通ってた道沿いにあった。急遽予定変更で見学。
 うん、良かったよ。以上。
 その後は孤児養育院へ。少ないながらも絵のコレクションはピカイチ。半分は今も(当時)孤児院として使われているそうで、フィレンツェにお越しの際はぜひ寄付も兼ねて立ち寄ってくださいませ。
 決して高くは無い窓に踏み段が……きっと子供が外を見るためなんだと思うと、ちょっと切ない気分になった。
 さて、フィレンツェにこれで本当にお別れだ。
 列車の窓からトスカーナの風景を見つつ余韻に浸る二人だった。

 ……で、ローマに帰ってきてしまった。
 勿論テルミニ駅。
 早速ツーリストインフォメーションのお兄さんにつかまる。
「安い! お湯熱い! 綺麗! 安全!」
 もう夕方だし、とりあえず紹介されたホテルに行ってみる。 
「……確かにキレイだし……安全そうだがな……」
 ビルの最上階の上、エレベーターも無いからな。危ない人も入ってこれんわ。
 でもちと高い。しかもYにはめずらしく値段交渉も失敗。相手が男性で無くお姉さんだったのが敗因かもしれない。
 だが、外も暗くなってきたし、あの階段をまた下りて別のホテルを探すのも嫌なので宿泊した。確かにお湯は熱いし、ヒーターも利きすぎるほどで洗濯もよく乾いた。ドアを開けるたびネコが入ってくるのが玉にキズだったが……久しぶりだよ、動物来たの。

 考えてみれば、私はまだローマを観光していない。いきなり寝込んだから。
 次の日からは強行軍だ。
 朝食は前日に買ったコーンフレークとミルク。超でかい箱なので、この先何食これで過ごすやら。
 そして、大事な仕事が。
 リコンファームである。
 ツアーでなく、個人で旅行するとこれが大変。航空会社に電話でもいいんだが、電話は苦手なんでデスクに直に行く。見せればいいもん、予約券。
 ちゃんとミスも無くチケットが取れてるのを確認して、いざ観光。
 でもそろそろお金が乏しい。そんなわけで銀行へ行ってキャッシング……と思ったら、持ってるカードを使える当時ローマで唯一の機械が故障中。うう……また貧乏さんだよ〜。
 トレビの泉、前を通ってとりあえず写真とった。
 パンテオンもさ〜っと見た。
 スペイン階段にいたっては人の多さに段が見えないほどで、ここもスルー。
 この日は国立絵画館、サンルイジ・フランチャージ教会、サンタマリア・ソプラミネルヴァ教会(名前長い)ヴェネツィア広場、コンセルヴァドール教会美術館、カピトリーニ美術館……欲張っていっぱい見た。
 見た……以上。なぜか日記にも感想も無く、記憶にも無い……。
 もう夜の8時を過ぎてる。叱られるおばちゃんもいないからいいけど。
「はらへった……」
 まだ微妙に痛い足を引きずりつつ、坂を上って下りて長〜〜い道のりを歩いて帰る。
 ホテル近くの店で買った切り売りのピザとツナ缶の夕食。
 お湯争奪戦に敗れた二人は、限りなく水のシャワーしか浴びられなかった……。
 なんか、ローマが嫌いになりそう、私……


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