20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:方向オンチにしか見えない世界 作者:錦小路真理

第10回   全ての道はローマに通ず・・・のか?
 絵葉書、ちっちゃな石膏のおウチや教会の模型、指輪、ブレスレット、ギリシャ料理の本、民族音楽集、ボタン、そして弦楽器ブズーキ……そんなものをお土産に買った。その他もう着ない服なんかを一緒に箱に詰め、郵便局から日本に送る。航空便だと早いのだがケチな私達は船便をチョイス。二週間かかるよと言われたが、どうせこの先そのくらいイタリアにいてから帰国するので丁度いいだろうと踏んだのだが……甘かった。荷物は帰国してから忘れた頃にやってきた。
 楽器屋まで行って買ったブズーキは壊れると嫌なので、この後ずっと旅のお供となった。
 貧乏絵描きはさすらいのミュージシャンに早替わりだ……見た目だけ。
 ギターは少し弾けるからいけると思ってたが、コードとかわからないし、チューニングすら出来ない有様だ。教則本も買えばよかった。今は実家で謎のオブジェと化している。
 絵葉書……詳細に書くとR18になってしまうので書かないが、お土産屋にはものすごい写真や絵のものも売ってた。ボカシくらい入れてくれ的な。さすが神話ですら略奪愛や同性愛におおらかな国。日本でも浮世絵っぽい絵でエッチなのあるけどさ〜、写真はちょっと……目のやり場に困る。
 ……買ってないよ! 私達はっ!
 フェタチーズ、クルーリ、スブラキ、ドルマーデス、ムサカ、ギロ&ピタ、ラム肉の煮込み……この旅で美味しいものもいっぱい食べたし(貧乏なんでB級グルメばっかだけどね)なんとかおおっぴらな迷子にもならずに済んだので、最終日はタベルナでレッツィーナ(地ワイン)で乾杯。
 丁度隣の席になった日本人のお兄さん達と遺跡や博物館について長い時間語りあい、結構酔ってた。
 ……明日は4時起きなのに……。

 ちょっと二日酔い。
 45分程寝過ごしてまだ暗い中空港へ向かう。
 ……思えば二週間前にアテネに着いたのもこんな時間だったな……。
 ん? バス停に張り紙が……
「何? 24時間ストって!」
 正直バス代しか置いてなかったんでタクシーのおじさんに
「こんだけしか無いんだけど」
 とお願いしまくって乗せてもらう。おじさん、ありがとう。
 アヴィオ〜エフハリストぉ〜ギリシャ〜。(さよなら、ありがとうギリシャ)

 最後に空港で軽く迷い、またもニオイに酔って吐きそうになりながらもローマ到着。
 ちゃお〜〜イタリア〜(ちわ〜イタリア)
 ……レオナルド・ダビンチ空港の通路ってスター○レックのエ○タープラ○ズ号の中みたい。それが第一印象だった。
 バスを探すが無かったんで電車で市内に。
 ううっ、テルミニ駅だ。
 アテネの旅行代理店のおばさんに
「ローマは怖いところだよぉ、特にテルミニ駅は変な人がいっぱいいて、荷物や財布盗られるだけだったらいいけど、命まで盗られないように気をつけな〜」
 ……そんな風にさんざん脅された場所だ。植えつけられた先入観から怯えまくる。
 ここで迷子にだけはなりたくない……死ぬなら畳の上で死にたい。
 そんな目の前でブランド物のバッグをかっぱらわれる日本人のお姉さんを目撃。盗られる方が悪いのだ的な周囲の対応……うわ、マジですかっ!
 でも親切にはされても、私は全く怖い目に遭わなかった。
 このいかにも貧乏な見た目が幸いしてなのか……う〜ん、ちょっと複雑……
 宿を見つけねば。
「物価、高いね」
 この頃、まだユーロじゃなくリラだったイタリア。なんか0の数ハンパない。それを差し引いてもアテネと全く物価が違う。ホテルも食事も高いよぉ、ローマ。
「2泊するからっ!」
「……わかった、まけよう」
 Yの値段交渉はすばらしい。でも4人部屋。ヒーターでパンツ乾かせないね……。
 まあ、相部屋の後の二人も丁度同じ年頃の日本人の女の子達だったので良かった。これからエジプトに行くらしい。今までになく複雑なホテルの中で、迷いまくって部屋に帰れなくなってる私を、彼女たちは優しく助けてくれた……何度も。ゴメン、ホント酷いんです。
 夕食は近所のスーパーで買ったパンと缶詰とマヨネーズとミルク。うう、貧相。
 水も買ったが、ガス入りしかなかった。こいつに落とし穴があった。
 着いて二日目、丈夫なだけが取り得の私が腹痛で寝込んだ……。
 まさかミネラルウォーターで腹を壊そうとは思いもよらなかった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 32