朝のコウからのメールを読んで、ユキはため息が出た。 別に、何も嫌なことが書いてあるわけではない。 昨日の日曜日、仲間とアウトドアをしたという楽しい報告だけだ。 それも、ユキの方から聞いた返信である。
ユキだって、子供たちと、近くの大型ショッピングセンターへ出かけ、 ランチにバイキングを食べてきたのだし、 それはそれで充実した一日だった。 その上、昨日は母の日だったから、朝起きたら、枕元に娘からのプレゼントがあり、 中には、感謝のメッセージが添えられた、洒落たエプロンが入っていた。 だから、母として、感動の素敵な一日になったのである。
なのに、何故、寂しいというかイラつくというか、 何とも表現のできない心境になるのか、ユキ自身わからないのだ。
そう言えば、先日のメールには、大阪の仕事仲間が、 コウと一緒に仕事がしたいからと、近くに引っ越してくるそうで、 そのための住まい探しをしてきたとあった。 そのことにも、少しだけ心にひっかかりを覚えた。
コウは、本当に仲間やら知人やら、友人関係の多い男のようだ。 仕事仲間と温泉に行った。 幼馴染とバーベキューをした。 近所の友達と登山をした。 休みの度ごとに、どこやら誰かと出かけている。 コウと会った時でも、コウの携帯には、常にメールや電話がかかってくる。 すごくたくさんの人と繋がりを持っているようだ。 昔の知人も今の知人も大事にしているコウは、 人に好かれるだけの人だとは思う。 現にユキも、コウと会うと楽しくて仕方がない。
コウとはネットで出会ったが、たまたま気が弱って、ココへ来てしまったが、 もう二度と行かないとコウはネットを卒業し、 ユキにも行くなと念を押した。 やはり、現実で出会った人が一番だと言っている。
ユキは、まったく友人に恵まれず、というか、 友人はできても、いつもその場限りで長続きせず、 若いころは、彼氏がいれば十分で、彼氏ができた途端、 女友達とは遊ばないようなタイプだった。 つまり、不器用で、両立できないという方が正しいのかもしれない。
だから、コウ以外に友人?と呼べるような人がいないユキにとっては、 どうしようもないし、張り合うつもりでもないけれど、 そんなうらやましい話を聞くと、いじけてしまうのである。
常識的で当たり前のこととはわかってはいるが、 コウは、仲間にユキを入れることは、全く考えていないし、 ユキも、自分の立場上、無理だと承知している。 コウの仲間は、年代差もバラバラだし、既婚者も未婚者もいる。 彼女や奥さんを連れてくる人もいるみたいだし、 ユキも、本音では仲間に紹介してもらいたい。
それが無理ならば、二人だけでいいから、どこか美味しいものを食べに行き、 素敵な景色を見に行ったり、面白いことを体験したりすれば気が済むものを、 コウには、全然そんな選択は持ち合わせてないようだった。
どうやら、コウは美味しいものは仕事仲間と行き、 楽しいことは幼馴染と遊び、 素敵な場所は、近所の知人と行ってみたりして、 何も予定のない日だけ、ユキと会うことを考えているようだった。
そして、ユキに求めるものは、つまり癒しだけのようである。 それと金である。そう金。 ユキは、自腹で電車賃を払って、コウのマンションに行き、 帰るまで、ずっとベッドの中で過ごすだけである。 食事と言えば、コウがレンジでチンしてくれた冷凍食品とインスタントコーヒー。 まだ、家事を頼まないだけありがたいのかもしれないが、 帰りの電車の中で、いつもやりきれない気持ちになってしまった。 もちろん、ユキだって別に嫌ではないけれど、 これでは、ちょっと酷すぎるじゃないかと悔しくなってくる。 ユキにとって、セックスの割合は、交際の内訳中20%くらいで十分である。 しかも、150万もコウにあげているのに、と、 増やすのも減らすのも、そっちの都合であり、確かに150万渡しているのである。
考えれば考えるほど、理不尽で、腑に落ちないし、 これが不倫というものかと、ユキは、自分の考え方もおかしいなと思いながら、 出るのはため息だけだった。
都合のいい女か・・
何とかしなくては。 正常な判断をしなくては。 何が正しいかもわからなくなったユキは、 ただ、自分を持て余してしまっているだけであった。
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