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作品名:ふつうの人 作者:ミント

第4回   ユキの不満
朝のコウからのメールを読んで、ユキはため息が出た。
別に、何も嫌なことが書いてあるわけではない。
昨日の日曜日、仲間とアウトドアをしたという楽しい報告だけだ。
それも、ユキの方から聞いた返信である。

ユキだって、子供たちと、近くの大型ショッピングセンターへ出かけ、
ランチにバイキングを食べてきたのだし、
それはそれで充実した一日だった。
その上、昨日は母の日だったから、朝起きたら、枕元に娘からのプレゼントがあり、
中には、感謝のメッセージが添えられた、洒落たエプロンが入っていた。
だから、母として、感動の素敵な一日になったのである。

なのに、何故、寂しいというかイラつくというか、
何とも表現のできない心境になるのか、ユキ自身わからないのだ。

そう言えば、先日のメールには、大阪の仕事仲間が、
コウと一緒に仕事がしたいからと、近くに引っ越してくるそうで、
そのための住まい探しをしてきたとあった。
そのことにも、少しだけ心にひっかかりを覚えた。

コウは、本当に仲間やら知人やら、友人関係の多い男のようだ。
仕事仲間と温泉に行った。
幼馴染とバーベキューをした。
近所の友達と登山をした。
休みの度ごとに、どこやら誰かと出かけている。
コウと会った時でも、コウの携帯には、常にメールや電話がかかってくる。
すごくたくさんの人と繋がりを持っているようだ。
昔の知人も今の知人も大事にしているコウは、
人に好かれるだけの人だとは思う。
現にユキも、コウと会うと楽しくて仕方がない。

コウとはネットで出会ったが、たまたま気が弱って、ココへ来てしまったが、
もう二度と行かないとコウはネットを卒業し、
ユキにも行くなと念を押した。
やはり、現実で出会った人が一番だと言っている。

ユキは、まったく友人に恵まれず、というか、
友人はできても、いつもその場限りで長続きせず、
若いころは、彼氏がいれば十分で、彼氏ができた途端、
女友達とは遊ばないようなタイプだった。
つまり、不器用で、両立できないという方が正しいのかもしれない。

だから、コウ以外に友人?と呼べるような人がいないユキにとっては、
どうしようもないし、張り合うつもりでもないけれど、
そんなうらやましい話を聞くと、いじけてしまうのである。

常識的で当たり前のこととはわかってはいるが、
コウは、仲間にユキを入れることは、全く考えていないし、
ユキも、自分の立場上、無理だと承知している。
コウの仲間は、年代差もバラバラだし、既婚者も未婚者もいる。
彼女や奥さんを連れてくる人もいるみたいだし、
ユキも、本音では仲間に紹介してもらいたい。

それが無理ならば、二人だけでいいから、どこか美味しいものを食べに行き、
素敵な景色を見に行ったり、面白いことを体験したりすれば気が済むものを、
コウには、全然そんな選択は持ち合わせてないようだった。

どうやら、コウは美味しいものは仕事仲間と行き、
楽しいことは幼馴染と遊び、
素敵な場所は、近所の知人と行ってみたりして、
何も予定のない日だけ、ユキと会うことを考えているようだった。

そして、ユキに求めるものは、つまり癒しだけのようである。
それと金である。そう金。
ユキは、自腹で電車賃を払って、コウのマンションに行き、
帰るまで、ずっとベッドの中で過ごすだけである。
食事と言えば、コウがレンジでチンしてくれた冷凍食品とインスタントコーヒー。
まだ、家事を頼まないだけありがたいのかもしれないが、
帰りの電車の中で、いつもやりきれない気持ちになってしまった。
もちろん、ユキだって別に嫌ではないけれど、
これでは、ちょっと酷すぎるじゃないかと悔しくなってくる。
ユキにとって、セックスの割合は、交際の内訳中20%くらいで十分である。
しかも、150万もコウにあげているのに、と、
増やすのも減らすのも、そっちの都合であり、確かに150万渡しているのである。

考えれば考えるほど、理不尽で、腑に落ちないし、
これが不倫というものかと、ユキは、自分の考え方もおかしいなと思いながら、
出るのはため息だけだった。

都合のいい女か・・

何とかしなくては。
正常な判断をしなくては。
何が正しいかもわからなくなったユキは、
ただ、自分を持て余してしまっているだけであった。


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