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作品名:寂しがり人形 作者:孤独な七番街

第3回   〜【こうもり傘の主】と【鵺】〜
【作品曲:暗黒の始まり→http://www.hmix.net/music/z/z5.mp3】




「・・・少女が輪廻転生ではなく、復活だったといいたいのか?」

「そうだ。」

【こうもり傘の主】は頷いた。


「生前と同じ人格を保ったまま転生する・・・・復活だ。―――簡単に言うが、それが一体どれだけ非情なことであるか、君には想像することができるか。」

【こうもり傘の主】はわずかに怒気を含んだ声色でそう告げた。
こうもり傘を左手から右手に持ち替えて続ける。場の空気がピリピリと張りつめているのがよくわかる。
…静かな怒りだった。

吐き気がした。嫌悪感といってもいい。
頭に鈍痛が走り、一瞬、感覚と意識を失いそうになる。
両手足が震える感覚を思い出しながら【貴方】はかろうじて立っている。


「…その少女が鵺だ。復活は輪廻転生とは違い一度しか行えない。つまり、復活した人生の中で魂を浄化しなければならないという事だ。」

ゆらゆらと左右に揺らめきながら【こうもり傘の主】は身体を鬼に変化させた。
歯をかみしめ、眉を吊り上げ、眼を血走らせて周囲全てを怨むように睨みながら。

「―――あの子はどうあれ、満たされていた。死にはしても両親を愛していたのだ。」

そのあと【こうもり傘の主】は10歳ほどの少女に身体を変化させた。少女の身体のまま話を続ける。
野太い声に少女の声が入り混じった。

「…逆に言えば、魂を浄化できなければ二度と輪廻転生の運命には戻れないということだ。戻れなかったものがどうなるか。
それは、生と死の狭間で未来永劫に過ごすことを意味する。怨霊化する者もいるだろう。」

【こうもり傘の主】は元の姿に戻った。元の感情のない声で続ける。
「君に救ってほしいのだ。彼女を」

「…救う?どうやって?大体…何故…僕が?」

【こうもり傘の主】が小さく笑った。
「君が鵺と同じ能力を持っているからだよ。君にはこれから鵺の輪廻転生の数度の記録すべてを実際に君の眼で見てもらう。
そして、行く先々で彼女を救ってやってほしいのだよ。それが来るべき君たち人間の災厄を防ぐことにもつながる。」

「災厄…?どういう意味だ。」

やはり、こいつは頭がおかしい。狂っているといってもいい。
それ以上に目の前の人物の支離滅裂さに【貴方】は混乱していた。
もはや思考が役に立たない。

「…さぁ、行って来い。君自身の為にもな。」

【こうもり傘の主】がそう言うやいなや視界が回転し始める。l
全身が震え痙攣を起こしているかのようだ。わけもわからぬまま視界が真っ白になる。
ひどい吐き気がする。

「…君の能力とは運命を捻じ曲げる力。そして、死魔の力―――生殺与奪の力だ。死神とも言う。
私は【イザナギ】という。君の名前は【ナギ】…私と君は親子のようなものだ。だが、まったく異なる存在と言っていい。」

視界がほとんど見えなくなってきている中、【こうもり傘の主】の右腕に1匹の蛇が纏わりついているのが見えた。
【こうもり傘の主】はそれをこちら放り投げた。

赤黒い蛇が地面に叩きつけられ、【貴方】の身体を這い回る。
気持ち悪かった。ぬめぬめとした感触が伝わってくる。

得体の知れない何かが自分の中に入ってくる気がして狂いそうになり――――――
…【貴方】は意識を失った。






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