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作品名:スマホで魔法アンドロイド始めました!! 〜 英雄戦国史 〜 作者:たばたこういちver.2

第1回   [5話] ”想う気持ち”と”後悔”と・・・”夕暮れの始まり”と
平ちゃんは苦しんでいた。自分が皆を巻き込んでしまったこと。

自分が皆を守れなかったこと。

「クソッ。僕にもっと・・・、もっと皆を守れる力があれば・・・。」
彼は悔しそうな表情を浮かべて力任せに壁を叩いていた。

平ちゃんは薄暗い自分の部屋でスマホの画面を見続けていた。

「ダウンロードするんだ・・・。もっと強くて、もっと皆を守れるような強いエンチャントを・・・!」
平ちゃんは学校を休んで、ただ一日中”ダウンロード”ボタンを押していた。
ダウンロードは1時間に1回が限度だが、平ちゃんはスロットがダウンロードされる度、エンチャン
ト スキルを確認し、研究し、より攻勢で戦えるエンチャントでスロットを埋めていった。
そんな日が数日続いた。
昼休み。
「最近、平ちゃん、学校に来ないよねぇ・・・。」
ボソッと雅は呟いた。
それにカツミは静かに頷いた。
風が流れてゆくように、時も流れて変化をみせる。
暫く時が経った後。
平ちゃんは普段通りに学校に登校するようになった。
彼は自信に満ち溢れていた。
以前、彼が皆を守れなかった事を克服して一回り大きくなった。
(今なら皆を守れる。絶対誰も傷つけさせない。)
そんな確信と高揚感に彼は包まれていた。
「僕が皆を守れるように頑張るから!もう心配しないで。」
マニア組と雅、カツミは微笑んだ。
あの後、学校からは食堂を壊した件で、その場に居合わせた全員が学校側から指導を受けて
いた。
「お前らがこれだけの非道い事件を起こしておいて全員何の責任も問われないのは、国の
上層部からの寛大な処置・助成金があったからで、お前らがブラックリストから外れた訳
ではないからな。」と教師たちはレッテルを貼る。
しかし自分たちは学校を、そして友達を守るために爆弾魔と戦ったと証言した。
しかし、確たる証拠も存在せず。更に言えば彼には、いや彼のエンチャントにはそれだけの逃走劇をなしえる力もある。
結果、教師サイドからは問題児としてレッテルを張られ、奥村にも逃げられてしまった。
数日も経つと普段通りの賑わいが皆を包む。

いつもの金曜日の昼休み。

普段と違うのは平ちゃんと雅二人が話すことが多くなったこと。
何やらコソコソとアイデアみたいなモノを言い合っては、
「それは違う。」とか、「ココをこうしたら良い。」等と話している。
十数日もそんな状態が続いていたので、流石のカツミも
疎外感からか、興味半分からか、二人が何を企んでいるのか尋ねた。
すると、二人はあっさりとコソコソ話の中身を話してくれた。

「僕たちで自警団を作れないかな。って思ってね!」
平ちゃんが生き生きとした表情で答えた。
「そう・・・。だけど、なかなか信用できるメンバーを集める為の作戦だったり、
ケースバイケースの行動をどうするか。とか、
いろいろ話し合ってたんだけど、一向に話が進まないんだ・・・。」
カツミは呆れた顔をして、自分の顔を指差しながら言った。
「こういう時の為に俺が居るんじゃないの!?」
「・・・、確かに!」
平ちゃんと雅の二人は暫く時間をおいた後、驚いた顔をしてゆっくり頷いた。
「いや、気付くの遅すぎでしょ!てか、俺は二人から信用されて無かったんですか!?
何かブルー入ったわ・・・。」カツミがしょげているのをよそ目に二人は
「新しい仲間、出来たよ!」
「うん。ブレインが出来たって感じだよね!!」と勝手に盛り上がっている。
カツミは額に手を添え、うつむきながら呟いた。「先が思いやられる・・・。」

カツミはまず、しっかりとした自警団のルールを構築しようと二人に提案した。
「メンバー内でトラブった時、きちっとルールを作っておかないと内部分裂が起きたり、臨戦態勢に入ったとき、アクションが遅れちまうから細かく作らないとな。」
カツミは指をくるくると回しながら言った。
カツミの提案に二人も黙ってうなずいた。
「うん・・・。と、まず仲間を傷つけないってのは絶対条件だよね!第一条件だよ!」
雅は真っ先に手を挙げて答えた。
「その場合、故意に傷付けた場合は当然ルール違反だけど、故意じゃない場合はどう判断するの?」とカツミ。
「その人に対して善意があるか、悪意があるかで判断するとか、どうかな?」
平ちゃんがそう提案するとカツミが切り返して質問した。
「その人のことを良く思ってなくても、円満に人間関係を築こうと努力している人はどう判断されるの?」
雅「う〜ん。難しいね!それって。」
「常に状況を改善しようと努力している人はルールに反しないと思うよ。僕は!」
と、強い口調で平ちゃんは主張した。
「う〜ん。考える必要があるね。その人なりに価値観、守るべきもの…。色々違うからな。」
カツミは腕を組み、考えながら言った。
「まあ、その人となりを見て判断ってことで!」
雅は笑顔で二人を指差した。
「そんなに簡単に判るのかな?」
平ちゃんは苦笑いした。

「他にルールで作ってるものはあるの?」
カツミの質問に間髪入れず、平ちゃんが答えた。
「まずは、戦闘のタクティクスについて話し合っていたんだ。」

「そうそう。うまくエンチャントを組み合わせて最強のコンボを作れないかなって。」
雅は笑顔で答えた。

「まあ、確かに。最強に近いコンボは作れるけど・・・。」

一瞬の間が空き、二人はカツミに答えを尋ねた。

「・・・けど?」

「相手プレイヤーにもよるけれど、どの戦術にしたって相性ってモンがある。いくら最強だと思えるようなコンボを考え付いても弱点は存在する。」
暫く考えて、指をクルクルと回しながら、カツミが答えの一部を言った。

「・・・そうだな、例えばだ。一番厄介なのは奥村みたいなプレイヤーだろうな。」
「そうだね。確かに・・・。」暫く考えた後、雅も頷いた。
「例えば、決定的な一打を与えたとしてもアイツならリプレイすることが可能だろうし、同じ網に引っかかってくれる可能性は、・・・極めて低い。
他にも、決定打が雅の雷攻撃だったとした場合、相手プレイヤーが雷属性が無効な場合、もしくは無効に出来る場合だった時、コンボは崩れる。その隙を衝かれたら一巻の終わりだ。」
「その為には、二重にも三重にも策を練っておく必要がある。1パターンだけの作戦だと網が広がり、いずれ獲物に逃げられて・・・、逆手を読み、逆に、飲み込まれる。」

「特に、奥村みたいなプレイヤーが居る場合、幾重にも網を張り巡らせて、複数の複雑なトラップが必要になる。その為にも、メンバーは増やしておくべきだ。多ければ多いほど有利に戦えるし、相手のミスも狙いやすくなる。連携も必要になってくるけど。」

「まずは・・・。」

三人の作戦会議は、場所を変えながらも翌日の朝まで雅の部屋で行われた。

明朝

「ハッ!?明後日って、歴史・ネオのテストじゅなかったっけ?」
平ちゃんは突然、現実に気付き落胆した。
「大丈夫だよ。今更見直した所で、専攻のテスト問題が変わる訳じゃないし!!」
と雅。
「そうだよ。自分でテスト問題選ぶんだから関係ないっしょ。」
カツミは冷静に指摘した。ビシッ。
「つい盛り上がって一日費やしてしまった・・・。くはぁ・・・。」
頭を抱えて落ち込みながら、平ちゃんは膝から崩れていった。
「そ、そりゃあ二人は歴史得意だろうけど・・・。」
平ちゃんはガクンと首を下ろしてヘコんでいる。
「もっと冷静になるべきだった・・・。」
「戦略の構築ミスだな。」
「うん!そうだね。」
二人は涼しい顔をして作戦会議に戻ろうとしている。
平ちゃんは二人の間に入って即座に作戦会議の一時停止を申し出た。
二人は”仕方ないなぁ・・・。”と言いながらこの申し出を受け入れるのだった。

休みが明けると学校は歴史一色になっていた。

歴史モノの漫画をひたすら貪るように読む不良たち。

週に2回の頻度で放送されている大河ドラマ1年分を早送りしながら観て勉強している生徒。
インターネットで歴史情報交換サイトを利用しているマニアや進学クラスの生徒たち。

用語説明 ・・・ “歴史・ネオ”
”歴史・ネオ”は基本的に他の教科とはテストの時期が別になっている。
理由のひとつとしてはテストの採点にやたらと時間を費やしてしまうという点だ。
マニアがマニアな回答に採点する訳なので、採点一つをとってもやたらと時間を食ってし
まうことが多い。
更に、間違った答案を出すと、それを調べるのに必要な時間が更にかかる。
周知の事実的な間違いなら良いのだが、それっぽい回答等が出ると新しい理論や意見を取
り入れて回答しなければならない。ココで非常に時間を食ってしまう。
新しい理論に基づいた回答ならば間違っていても多少の点数(△点)を考慮しなければな
らない。
それだけに、いかに新しい知識を皆で共有して広めるかといったことが大きな課題にもな
ってくる訳だが・・・。
はっ!!歴史・ネオの答案の仕方について触れてませんでした・・・。ウッカリ。
“歴史・ネオ”は生徒がまず自分の専攻したい時代を選びます。
(日本史でも、世界史でも時代を選ぶ。)
選んだ時代背景の中で、自分が注目している歴史上の人物を選ぶ。
そして、その人物が行なってきたことを事細かに時代の流れに沿って回答してゆく。
という手順なわけです。
その為、マニアックなチョイスをする人ほどマニアックな回答員が求められるわけですが、
マニアックな人ほど成し得ている事も少ないわけで、点数を取るのも難しい訳です。
ちなみに、一般人は回答する人物に含まれませんのでNGです。
あくまでも、社会にある程度の影響を与えた人物に限られます。
まあ、専攻するときにこの人はダメとか言われるので、アウトの人物が出ることは少ない
わけなのですが・・・。
あと、テストの点数は100点が満点ではありません。
自分の回答した人物に沿っている事なら加点の対象になります。あながち200点越えという
のも不可能ではないでしょう。ただし、時間制限は設けられています。4時間まで回答出来
ます。1時間したら退席は自由となります。
一般人も一緒にテストを受けられるのが特徴です。(就職活動などの評価の対象等にも。
自分の実力を試したい人にも。)
上に戻って、もう一度今のことを頭に入れて読み直してください。

話はストーリーに戻る。

「なんか。やっぱり歴史・ネオのテスト前の雰囲気って独特だよね・・・。(笑)」と雅。
「至って普通のテストと変わらないんだけどな・・・。」とメガネをクイッと上げて雅が答え
る。
「いや、全然。別物でしょ・・・。」苦笑いしながら平ちゃんが答えた。
「“歴史・ネオ”って本当に日本を代表する教科だよね。外国にはこういう感じの教科、
無いもんね。」
確かに。と、皆も頷く。

「まあ良い。テストは目前だしな。」カツミが答えると、他のみんなは一斉に各自の勉強
法で歴史の勉強に精を出し始めた。
歴史・ネオにおいてカツミは圧倒的な評価を皆から得ていた。
高校生では150点を超える回答を出す人物はそう多くない。
カツミはその中でもアベレージで200点近い点数をいつも出している。
いつも専攻する人物が一緒という事は、毎回点数が似たり寄ったりになってしまうことが
多い。上向きに上昇しているなら評価は得られるが、毎回テストの点数が一緒だと下降し
ている場合に周りからの評価がよろしくない。
その中でもカツミは着実に点数を右肩上がりに上昇させていっているのが凄い。
今回は200点超えが当たり前とまで言われている。
一種の国民の祭りのようなものだ。
尚、このテストで1位となった者は殿堂入りになり、採点者側に回ることも出来る。
ちなみに、歴史・ネオの採点者は高給取りであるし、歴史を調べるという名目で1年間給料
が保証される。まあ大抵、この域まで達した人は歴史マニアにほかならない訳で、皆必死
に歴史の研究に明け暮れている。
また、話が脱線。続きをどうぞ!

一日歴史漬けの日が終わり夕暮れ時がグッと近づいてくる。

生徒からは「ようやく解放された!」とか「暫く大河は見たくねえ!」とか言ってる声が
ちらほらと聞こえて来る。
更に、人によっては今シーズンの大河のアレが熱かった。等と熱弁している人もいる。
カツミはというと相変わらず自信に満ちた笑みで雅とあーでもない。こーでもない。と話
している。
雅はというと、150点を今回越えられたかどうかとカツミと話しながら緊張をほぐそうとし
ていた。
平ちゃんは・・・。というと、言うまでもないがあまり良い結果とはなっていないのは確実で
ある。
平ちゃん「や、やっちまった・・・。くはぁ。」

次の日

「今日1時限目、体育でしょ〜。思ったんだけど雷化使って長距離走、走ったらどうなる
のかな〜?」と雅。
「阿呆なこと言うな!そんな事したら、皆に銀河図書館ネット教えるようなモンだろ!」
とカツミ。
「でもさ、知ってる人が多いほうが奥村も僕らに接触しづらくなるし対抗勢力も作りやすいんじゃない?」眉を歪ませて考えながら雅は言った。

「確かにそれは言える、が・・・。だが、そうなると対抗勢力の他にも派閥が沢山出来て、派閥争いが起きる。そうなったら恐らく、収拾がつかなくなるぞ?」

「戦国時代みたいな・・・?」とおどける雅。

「本当にそうなったら、・・・恐ろしい事が起きるな。」

「うん。」とだけつぶやき二人は学校への歩みを早めた。

テストの期間が終わった日常は、ただダラダラと過ぎていった。

暫く時が経つ

今日は調べ物があり、学校から帰るのが遅くなった。

勿論、お供にはカツミがくっついてくる。

「すっかり遅くなっちゃってゴメン!」と雅。

「いや、諸葛孔明の調べ物には最適な時間だったよ。」と雅にフォローを入れるカツミ。

カツミは図書館のインターネットを使って時間を潰していたようだ。

「下校時間ギリギリだったね。」校門に向かって走りながら雅はカツミに礼を言った。

学校を出て土手沿いを歩いていると、薄暗い道の先で何か大きな声が響いてくる。

何やら道の途中で少年二人が騒いでいる。

ん?様子がおかしい。

そう思って雅たちは二人へ近づいてゆく。

「危ないです!危ないですよっ!!この人。きょ、凶器持ってます!」
中学生と思われる丸刈りの少年がもう一人の小さい少年の棒のような物を交わしながら注意してきた。
丸刈りの少年はバタバタと体を折り曲げて攻撃を交わしている。
雅はそこへスマホをセットして突っ込んでいく。

棒のような物を振るっている少年の叫び声が聞こえてくる。
「オラ、金出せって言ってんだよ!いい加減にしねえとマジで、てめぇ切り刻むぞ!!」
聞き覚えのある声があたりに響いた。
土手っぷちの土が辺りに舞い散る。
と共に轟音が響いた。恐らく力が入ったのだろう。

「後ろへ避けてっ!二人ともっ。」と何処からか平ちゃんの声が響いた。
雅とカツミの二人が咄嗟に後ろへ避けると次の瞬間、前方の土が吹き飛んだ。
土手の上から再び平ちゃんの声が聞こえる。
「そいつ、奥村だよ!」
「!?」二人が反応して臨戦態勢に入った。
すると、声を聞いたのか、背の高い女性が一人奥村の方へ近づいてくる。
背の高い女性「こら!何してるんだ。お前ら!こんな所で火遊びするな!!」
女性のナリからして女子大生といった所だろう。
「お前、いい加減に・・・、」女性が説教に入ろうとした瞬間、女性の方へプラ棒が振られる。
「危ない!」咄嗟に雅が女性の手を引く。
女性のいた場所の近くをプラ棒がブンッと音を立てて通過する。
「関係ねぇ奴は消えな・・・。」
すると、瞬時に表情を変える。
「いや、金を置いてきな。」とうすら笑った。
「やめてください。こんなの何にもならないッス!」
丸刈りの少年が静止しようと叫ぶ。
だが奥村は止まらない。
全力で坂を下りてきた平ちゃんが奥村に怒鳴った。
「お、奥村!!お前、まだ懲りてなかったのか!いい加減にしろ。」
「ほう?格下が俺に意見するのか?」とにらみ返す。
「僕もただ無駄に時間を費やしてきた訳じゃない。それに、お前にはもう負けない!!」
「お前じゃ一生、俺の敵にはなり得ないよ。」と馬鹿にして奥村が笑う。
「じゃあ、試してみるか?」奥村は平ちゃんの方へ振り向き空中で勢い良くプラ棒を振るった。
轟音と共に近くにあった自転車が吹き飛ぶ。
平ちゃんはスマホを取り出して、イヤホンを装備した。
奥村も臨戦態勢に入る。
「コール タイム! セット。」
平ちゃんもすかさず叫ぶ。
「コール! セクション テレポート アーマー、アーマード スーツ、ロケット アタック ブースター!」
平ちゃんの周りに揺らめく半透明の霧が発生する。
それと同時に平ちゃんの身体の表面に文字が浮かび上がり、映画で出てくるようなパワード スーツが次々と出現し体を包み込む。
そして最後に背中にブースターの様な物が出現した。
「もう負けないぞ!お前には。」いつになく平ちゃんは興奮している。
「ココは僕に任せてくれ!」
「ほう。文明の利器シリーズを二つも揃えたか。」
奥村の視線が急に険しくなった。
「だが、またミスを犯したな。お前は!」
パワード スーツに包まれた平ちゃん目掛けて奥村が突進してゆく。
平ちゃんはすかさずロケット アタック ブースターを起動した。
ブースターから球状の光の玉が二つ飛び出て奥村目掛けて飛んでゆく。
奥村は出てきた光の玉をなぎ払う。
と同時に玉の中心から衝撃が発生する。
奥村は若干よろめきながら全身を繰り返す。
だが、第2射がなかなか発生しない様で平ちゃんは戸惑っている。
次の瞬間、第2射が発生する。
平静になろうと平ちゃんは肉弾戦の準備に入った。
「ん?スーツが・・・。」
ヨロヨロとしている平ちゃんに向かって奥村の刃が迫る。
「こ、こんなはず・・・。」平ちゃんの悔しそうな声が聞こえる。
刃が胴体に届く。
「まだ、まだアーマーがある。ここからが勝負だ。」
奥村が平ちゃんにつぶやいた。「もう終わりだよ!」
プラ棒が平ちゃんの胴体に着く前に奥村が叫ぶ。
「コール! プラ!」
奥村が持っているプラ棒と反対の手にプラ棒が出現する。
一撃目が入ったと思った瞬間。プラ棒がある空間からブツっとプラ棒の先がかき消えた。
あたりには半透明の霧が集結している。
更に2撃目。
2撃目は胴体にクリーン ヒットし、アーマーが大きな音を立てて衝撃を吸収する。
瞬間、胴体のアーマーがかき消えた。
隙を作らず更に奥村は叫ぶ。
「コール!プラ。」
第3撃目で平ちゃんは致命的な一撃を喰らう。
「そんな!アーマーは!?」
「やはりお前は2流、いや3流のプレイヤーだな。」と奥村は吐き捨てた。
カツミ「そこまでだ。もうこれ以上傷つける意味はないだろ!」
「この程度、セベラル タイム チョイスを使うまでもない。」
「待て!責めて平ちゃんの何が悪かったかだけでも、教えてやってあげろ。」
とカツミ。
「そうだよ!学校も相当休んで研究してたみたいだし!」
「アイツを待つつもりは無い。お前らとやりあうつもりもない。」
「だったら、どちらかが果てるまで戦うだけだ。」
カツミはメガネをクイッと上げて睨みをきかせる。
「わかったわかった。敗因を教えてやるからアイツに伝えてやればいいだろ。」
面倒くさそうな表情で奥村は髪をかいた。
「・・・アイツは〜文明の利器 シリーズ〜のエンチャントを二つも使っていたんだ。」
「敗因は2つ。いや3つといった方が良いか。」
「一つ目の、これが一番大きなミスだ。〜文明の利器 シリーズ〜のエンチャントは他のシリーズと違って性能のスペックの善し悪しが周囲にある電力で決まる。」
「周りに電力がある場所で無ければ高度な攻撃も防御も出来ない。逆に、変電所などでは無敵の強さを誇る。おおかた、家の中で引きこもって研究でもしてたんだろ?」
「2つ目と3つ目は、一人で戦うと言った事だ。そこの雷男も一緒に戦っていれば、パワーもプラスされただろうに。更に3つ目。三人で戦った方が有利に戦えたな。」
「以上だ。」
奥村は丸刈りの少年に近づき、少年のポケットに手を突っ込んだ。
「授業料、払いな。」ポケットから無理やり財布を取り出すと、自分の胸ポケットへ突っ込んだ。
丸刈りの少年は恐怖で身動きが取れない。小刻みに震えているようだ。
「そんなに金を盗んでどうするつもりだ!?」雅が尋ねる。
「暮らすためだよ・・・。」と冷たい声で奥村が答える。
暫く時間が経つ。平ちゃんが再生されたのを見計らってカツミと雅は平ちゃんに敗因を教えてあげた。
「クソッ!またしても皆を助けられなかった。自分は・・・、無力だ・・・。」
落ち込む平ちゃんをよそ目に時間は緩やかに流れてゆく。

その夜からまた平ちゃんは家にこもるようになった。


1週間後の夜
平山宅 平ちゃんの部屋にて

「・・・ついに手に入った。最強の力が。これさえあれば誰でも救うことが出来るんだ・・・。」

もう夕日も暮れる時間だった。


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