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作品名:生きる! 作者:かつやまひろし

第4回   第4章 青春時代2
第四章 青春時代2(靴ばこのラブレター)

久しぶりに家に帰り(たかが2泊3日の修学旅行だ)、オフコースというグループの曲で、“さよなら”を聞いた。
さよなら、さよなら、さよなら〜ああ〜、もうすぐ外は白〜い冬〜。

僕の心はまさに冬だった。だけど、その気分に結構酔えて楽しんでた気もするなあ。

この頃、横浜銀蝿というロックンロールバンドが売れていた。これだ、と思った。エレキギターは幸い、高校に入る時、親に買ってもらって持っていた。
簡単なギターのコード、3つ押さえるだけで、銀蝿の曲はだいたい弾けた。ちょっと難易度の高いバラードも練習した。
よし、これでまたモテるぞ〜!
チャンスがやって来た。文化祭のシーズンが来たのだ。なんとか4人集めて銀蝿のコピーバンドが結成出来、文化祭に向けて特訓するのだった。
フォーク部に幽霊部員として入り、放課後、音楽室で練習した。毎日毎日、練習した。
僕たちの噂が学校中で広まり、人気が出てきた!
・・・気がした。

ある日の朝、学校へついて上履きに履き替えようと、靴ばこから取り出すと、入ってるではないか!可愛い手紙が!靴ばこに!
僕の靴ばこか、もう一度確かめた!
間違いない!僕のだ!まぎれもなく、僕の靴ばこだ!僕宛へのラブレターだ!
誰からかな?あの子かな。隣の席の子かな。こないだ、ちょっと話しが弾んだのがよかったのかな。
想像を凄く膨らましながら、手紙をさっと、ぺったんこのカバン(当時、流行っていた、弁当箱しか入らないくらいの、布製の袋。彼女がいるやつは手作りだ。弁当箱も縦向きしか入らないので、ごはん・おかずは、いつもどちらかに寄っていた。)に入れ、教室へルンルン気分で向かった。
この時の気持ちは、どうだろう、生まれて初めて感じる、なんとも言えない不思議な気分だった。僕の周りがふわっと青色で包まれたような感じ・・・。よくわからないか。

ラブレターをいつ開けるか、楽しみにしながら授業が一時間、二時間、と進んでいく。僕にラブレターをくれた女子の視線を授業中、誰かは分からないが感じていた。気がした。
よし、昼休みに音楽室で読もう。
友達2人を連れ、音楽室へ向かった。
3人で、誰がくれたか予想しながら、ワイワイいいながら、音楽室へ向かった。
そして、いよいよ開封の時。ジャジャーンと言ってしまった。もったいぶりながら、手紙を取り出した。
そして、読み上げた。

「あなたには横浜銀蝿とか似合わないので、文化祭に出るの、やめとき。」

・・・・・・・・・。

それだけが書かれていた。女の子独特の可愛い字で。

フラれた時よりきつい気分。
友達二人も、僕にかける言葉を探してた。
まだその場で笑い飛ばしてくれたほうが、よっぽどよかった。

その日、家に帰ってから、オフコースの曲で「眠れぬ夜」を聞いた。


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