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作品名:花筏〜はないかだ 作者:SHIORI

第83回   83
祖母がデイケアサービスに行くのを楽しみにするようになったのも、介護施設に入居することになった時も嫌がりもせず、旅行にでも行くかのように気軽に行ったのも、そういう空気を察してのことかと、栞は思っていた。しかし冷静に考えてみれば、祖母はKY(空気読めない)の典型のような女だったはずである。父が酒を飲んで口が軽くなった時に話を聞いてみると、案の定であった。
「実は、米寿を過ぎてからも、まだいたんだよ。」
「ボーイフレンドが?」
「うん。」
「マジ?」
「マジだよ。」
真田さんが亡くなった二年後に、岡田さんも亡くなった。その年の秋に栞は結婚して家を離れたから、会ったことも聞いたこともないけれど、何人かのボーイフレンドがいたと、英俊は言うのだ。その中のどの人かに会うのが楽しみで、デイサービスに行くのを楽しみにしていたのだろうと、父は推察する。そして昔からの顔見知りの男の人達のほとんどが鬼籍に入ってしまったので、介護施設への入居に同意したのだろうと言われて、栞は少し、まゆ根を寄せた。
「ひょっとして、新しい出逢いを求めて?」
「積極的にではないにしても、期待はあったかもなあ…。」


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