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作品名:花筏〜はないかだ 作者:SHIORI

第81回   81
第三章


祖母の話を聞くのが面白くなったのは、いつ頃からだろう。
学校の勉強はもともとあまり好きではなかったから、そんなにマジメに授業を聞いてなんかいなかったし、歴史の中でも近・現代の部分は三学期に入ってからあわただしく大雑把にやってなしくずしに終わったようなイメージしかないから、『戦争があった時代』という漠然とした認識しかない。『激動の昭和』と言われる時代を、祖母がどのように生き抜いてきたかとか、そんな話を聞いてみようなんて、考えたこともなかった。食べ物を残すとバチがあたるとか、まだ使える物を棄てるなんてもったいないとか、『アタシが若い頃はシリーズ』の話なんて、ウザイ以外のなにものでもなかった。そういう時代に生まれなくてラッキー、の一言で終わらせる話題だった。
たまたま、本当になんとなくの気まぐれで、暇潰しの退屈しのぎに、炬燵でお茶を飲みながら祖母と無駄話をしていた、そんな時に、八百松も真田さんも岡田さんも単なる『茶飲み友達』ではなくて『ボーイフレンド』だったのだと知って、祖母の男性遍歴に下世話な興味を持ち、ワイドショー的な下司の勘繰りで根掘り葉掘り聞いてみた、ただそれだけのことだった。
栞が結婚して他県に移り住み、妊娠、出産、育児に追われてドタバタしている間に、十年の歳月が流れてしまった。その間に、祖母は栞に自分の男性遍歴を語ったことなどすっかり忘れてしまった。時代は二十一世紀になり、玉川村は平成の大合併でときがわ町になり、祖母は米寿を祝い、ひ孫が十人以上になった。


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