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作品名:花筏〜はないかだ 作者:SHIORI

第69回   69
「幸平さんがあと三ヶ月早く死んでいれば、母ちゃんは遺族年金がもらえたんだ。」
父は玉川村の遺族会の副会長をしていた時、県の事務局の人に問い合わせてみたのだと言う。
「じゃあ幸平さんて、飲んだくれのゴクツブシで、再婚してもおばあちゃんを幸せにしてくれなかったし、死んだタイミングまでいまいましいと言うか、疫病神みたいな人じゃないの。」
「そうだよ。義行の父親だし、故人を悪くは言いたくないけどな…。大きな声じゃあ言えないけど、もし、母ちゃんが遺族年金をもらえていたら、支給が始まってから今までのぶん全部で、何千万円って金額のはずだぞ。」
「マジでー?」
再婚した相手が大酒飲みの甲斐性無しであったとしても、それは個人の責任なのだから仕方ないということなのだろう。再婚が舅など親族の命令で、本人の意志ではなかったとしてもだ。そんなふうに実態は戦争未亡人で苦労をしているのに遺族年金をもらえない人もいれば、遺族年金をもらうために実質的には再婚をしたような状態であっても婚姻届を出さなかった人達もいたようだと、英俊は言った。


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