父の考察では、この、パンク修理ができるということが、後に縁談がもちあがった時、先方に気に入られた理由のひとつにもなったし、三十代から四十代の頃にバイクを乗り回すようになったことにつながったのではないかとのことだ。ともあれ、お嬢様かどうかはさておき、それなりに生活に余裕がある家であったのは、まんざら嘘でもないだろう。勝四郎さんのメカケにしてくれと自分から言ってきた女がいて、祖母には腹違いの兄弟だか姉妹だかがいたと言うのだから。 「会ったこと無いの?」 「葬式の時に会った…かな?憶えちゃあいないねえ。」 英俊と絵美子は、栞の目から見ると友達同士のような感じの夫婦だ。父は男を感じさせず、母は女を感じさせず、仲がいいけれどベタベタした感じではなく、和気あいあいと店の仕事をこなしている。父が不倫をしたりメカケがいたり、そのメカケの子供がいたりするなんて、栞には想像もつかない。 「そういう人がいるって、おばあちゃんは知って、なんとも思わなかったの?」 「別にめずらしいことでもないし、家に迷惑かけてたわけでもないからねえ。誰もなんとも思ってなかったんじゃないかと思うよ。」
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