ADHDやアスペルガー症候群、LDなどの軽度の広汎性発達障害の要因として遺伝的なものもあるとされているが、それだけがすべてではない。育てかたが悪いとかいった、親の責任がすべてでもない。決定的で絶対的な要因はわからないけれど、脳の発達がアンバランスでできることとできないことの差が極端でコミュニケーション能力が欠如しているだけの状態を障害というのは、誤解や偏見を助長すると、専門家は指摘する。ただしそれはあくまで近々の話で、絵美子が尚幸を生んだ頃はまだ、発達障害や自閉症について精神障害やノイローゼや知能の障害と混同視され、誤解や偏見が蔓延していたから、祖母も父母も目一杯誤解し、勘違いして悲嘆に暮れ、途方に暮れた。 たとえば身体障害者の場合は、見たり説明されれば理解できる。知的な障害の場合も、配慮することは可能だ。しかし情緒面に特異な応対を見せたりコミュニケーション能力が劣っているだけである場合、それが障害だと言われても、理解できない場合が、ままある。また高齢者の場合、障害者が生まれるのは祟りだとか血が汚いのだとかいう誤解を消去して科学的な正しい知識をインプットすることは非常に難しい。昔からの言い伝えなど貧弱な情報しか手に入らなかった時代、偏見は人々の心にヘドロのように澱み、浚うことなどできなくなってしまっていたのだろう。今でさえ、そうした誤解や偏見に基づいて人を差別したり蔑む人はいくらでもいるのだから。
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