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作品名:花筏〜はないかだ 作者:SHIORI

第31回   31
第二章



表面的には下ネタのジョークに声をたてて笑ったり明るく捌けた性格を装っているけれど、絵美子は本質的には男女関係には極端に潔癖で、カトリック教徒のように厳格な考え方の女である。そんな母にとって、入れかわり立ちかわり男がかよって来る姑などというのは、腹にすえかねると言っていいくらいに恥ずかしくて情けない、みっともない存在であったらしい。不幸なことに婚家は酒屋で、オジサンやオジーサンが立ち寄る場所として不自然でもなんでもない。酒屋といっても田舎のそれは、コンビニの前身と言えるような何でも屋の状態だったから、酒の他に食糧も煙草も野菜の種も、葉書や切手や収入印紙も、駄菓子も文房具も日用雑貨もし尿汲み取り券も売っていた。宅配便の受付や写真の現像の取り次ぎや、仕出しなんかもやっていた。スーパーカブや軽トラに乗って煙草やワンカップ大関を買いに来るオジーサン連中がみな、買い物をした後に祖母の離れに上がり込んで『イッパツやって』いるような悍ましい妄想に、絵美子は苦しめられた。化粧をしなくても血色のいい農家のオバサン達はみな、そのことを知っていてそ知らぬフリをしているのだろうという居た堪らなさに、絵美子は耐えていた。祖母はそんな絵美子の心痛を思いやるどころか察しもしないノーテンキさでゲートボールだのカラオケだのと遊び歩いていた。ゲートボール場だけでは話し足りないと言って、家に誘った。


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