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作品名:花筏〜はないかだ 作者:SHIORI

第3回   3
けれど、災害や病などによる不慮の死に急襲されない限り、誰だって歳を重ねて高齢者になる。なった時に、配偶者とであれ他の誰かとであれ、素肌を寄せあいたい、抱き合いたいという情動が百パーセント完全に消滅しているという保証なんてどこにも無いのに、どうして男性はおおっぴらに女性の尻を追い回したとしても笑って許されて、女性が男性を求めるのははしたない、恥ずかしい、あるまじきことだと糾弾されなければならないのだろう。祖母は若い男に色目をつかったりしなだれかかったりしたわけではない。自分と同世代の普通のおじいちゃん達と、ゲートボールや老人会の集いなどで意気投合し、家に招いたりカラオケに行ったりしただけだ。その相手の数が一人ではないからというだけで、あたかも獣か異常性欲者であるかのように好奇の目で見られ、侮蔑の言葉を投げつけられる。もちろん老若男女を問わず、不特定多数の異性とむやみやたらに同衾するのであれば、異常者と言われても仕方ない。それに相手に配偶者があることを全く意に介さない点は、咎められても仕方がないかもしれない。
けれどもう繁殖の能力も義務も無い、長い長い人生の幾山河を越えてきてその黄昏時にある者同士が、老いさらばえた身体をひっそりと労りあい、あたためあうことに、どうしてそんなに目くじらをたてて嫌悪しなければならないのだろう。


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