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作品名:花筏〜はないかだ 作者:SHIORI

最終回   124
小さな船で、浜からマニャガハ島へ連れて行ってくれた現地の人が、途中で船をとめ、海の中を覗いてみろと言う。旧日本軍の飛行機が沈んでいると言うのだけれど、波が光って全然見えなかった。浜にはボロボロの錆びた鉄の塊があって、戦車の残骸だと教えられたけれど、その時は不謹慎に、景観を損ねるゴミだとしか思わなかった。さっさと片付ければいいのにとさえ思った。
もし、またいつかサイパンへ行く機会があるなら、また千羽は無理かもしれないけれど鶴を折って行こうと思う。戦死した人達じゃあなくて祖母のボーイフレンド達の名前を書いて、祖父の御霊に見せてやりたい。祖父は驚くだろうか、それとも呆れるだろうか。兄弟の中で一人だけ、ちゃんとお墓に御骨がある幸平さんは、肩をすくめるだけで、何も言わないだろうと、栞は思う。
祖母は今日も周りの人をドロボー呼ばわりしたり、今だって店番できるとかアタシは男にモテるとかいばりながら、桃色の波間を揺蕩っている。


花筏散り浮いて猶薄墨のすがる枝恋う心ゆらゆら


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