「大きい鶴でかえってよかったよ。ひとつひとつに亡くなった人の名前を書くのに、大きくって書きやすいって、年寄り連中には好評だったよ。」 そう、祖母に礼を言われたのを憶えている。小学生だったその時には、へえー、とか、ふーん、とか思っただけだった。けれど今は、大切な家族を喪った人達が、自分が折った鶴に亡くなった人達の名前を書いたのかと思うと、なかなか感慨深いものがあるし、バスや飛行機の中で周りの人々に、孫娘が折ってくれたとか言って見せびらかしていた祖母の得意気な顔が思い浮かべられる。 栞がサイパンへ遊びに行ったのは、二十代半ば頃のことだ。誘われた時、一も二もなく応じたのはやはり、祖母のサイパン旅行の話が頭のすみにあったからだと思う。その割には玉砕の意味もバンザイクリフの名の由来も知らないで、ノーテンキに水着を選んでいただけだった、二十代の自分。 サイパンの海はものすごくキレイだった。初めて見る強く鮮烈な、それでいて透きとおった青に圧倒された。テレビで見たより遥かに鮮やかな、眩しくきらめく青。青は精神を落ち着かせる色だと本には記してあったけれど、サイパンの海の青はビタミンカラーのように身体を躍動させる、輝く命の色だと思った。
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