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作品名:花筏〜はないかだ 作者:SHIORI

第102回   102
『私達のよろこび…。希望すべてを取り一しゅんにして去る病魔、親を失った子等には誰がために、この世に生きながらえる望みがあろう。親孝行したい時には親は無しの昔のことわざが今しきりに頭に浮かぶ…。自分をかえり見ず幸平が可愛想だの母の最後の一言があれから片時も頭からはなれない。何処までも子を思う暖かい親の愛情……。今更ながら親の有難さを痛切に感じます。そして最後まで心配かけた自分の不孝を悔ゆるのです。サッちゃん、母ちゃんは俺だけが不孝だったねえ、最後まで幸平が可愛想と心配かけちゃって…。まったく母にはすまないなあー…。今となっていくら詫びても詫びても取りかえしのつかぬ悔のみが体内に氾濫してくるのです。天命とは申せあまりにもあっけ無い人のいのちのはかなさ……。逢うは別れと言うけれど、着いたあの日にかぎってあんな悲しい別れ、永久の別れになるなどとは夢にも思わなかった。あまりにも大きな打撃に一時はぐらぐらっと天地の引っくり返るような思いだった…。そして又ユミ子の淋しく痛ましい姿が今も目前に浮かび……。思い出すごとに熱いものが胸にこみ上げてくる。サッちゃん色々とこまかく気付いて、ユミ子のこと見てやってくれ。それが何よりの母への供養だ。俺だって今となっては致し方無い、すべてをあきらめて、せめて母への供養のためと思って、より以上その後も元気で積雪の広野にて酷寒と闘っています…。サッちゃんも御身体に気をつけて国の為……忙しい父の為ガンバッテ下さい。二月の月も残り少なく内地にはもうポツポツ春の訪れを思わせらるるような暖かい風が吹くことでしょう。酷寒の樺太にも春の訪れるのも遠くは無い…。今日、兄さんの○○からの元気な便り戴きました。そしてその中に、つぎのようなことが書いてありました……「私達には母の霊魂がついているんだ、しっかりやろう」って……。サッちゃん本当に兄さんの言われる通り母は何時も私達を守っていて下さるんだ……お互いにしっかりやりましょうね…。父にもよろしく、トミちゃんやユミ子にも…あっそうゴチソウニナッタ一ト市の徳ちゃんにもよろしく。では又…サヨナラ。』


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