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作品名:エゴイスト・マージ 作者:暁☆

第9回   三塚・過去。
三塚は前の椅子に
私と向かい合う様、跨いで座った



「流石に、生徒には手を出さないようにしてるんだ
後々面倒くさいんでね」



突然の口調はガラリと変わっていて
一瞬耳を疑う程で

「え……?」

不意に聞こえた声に驚いて
見上げた顔は今までのやさしく穏やかな三塚からは
想像もできないほどの
見たことも無い冷たい笑い顔で
ゆっくりと私の髪を梳い上げる


「はぁ。お前には何度も見られちまってるからな
取り繕うのがもういい加減メンドーになってきた」

そういう声色も聞いたこと無くて

「ガキは嫌いだし、お守りは面倒だって言ったんだよ
さっきの答え

っていうかさぁ、好きって何?」

「何って……」

「俺、もともと恋愛とか全く興味ねぇしな。
ていうか、好きになるという感覚が分んないって言った
方が寧ろ近いか」


俺?ダ……レ?コノヒト


「ど……どういう意味?」


「まんまさ。
生まれてこの方誰かを好きになった事は一度も無い。
そういう感情すらな」




私がバカみたいに呆けてると

「……いいだろう
面白い話を聞かせてやる」

抑揚すら感じられない声で目の前の人物は話し出した

まるで絵本を子供に読みきかせるように







「昔々あるところに(5歳の)男の子がいて
その子は魔女と一緒にすんでいました

その魔女は次々に色んな人間を追いかけては夢中になり
人間と仲良くしている間は
その人間のことしか考えられません
男の子のことなどすっかり忘れていました

でも、その人間が魔女を捨て別の所に行ってしまうと

まるで突然存在を思い出したかのように
その男の子のところに来ては
自分の感情を怒り狂ったようにぶつけるのでした

それは魔女が別の人間を見つけるまで執拗に続きました
そして、またその人間が魔女の元を去ると
同じように男の子を傷つけるのです

男の子は、魔女の豹変振りに驚きと恐怖で一杯で
怖くて怖くて仕方がありませんでした

でも、男の子はどんなに怖くても悲しくても
とても小さい子供だったので誰かに助けを求める方法が
分かりません

それでもある時やっとの思いで
人間に”助けて”と言えたのです

ですがその人間は見てみ見ぬフリをして足早に
逃げてしまいました

男の子はその時、知りました

他人に助けを求めることは無駄なのだと

そして次第に”し”を覚悟するようになりました


そんなある日、魔女は自分の気に入った人間が
いなくなってしまう原因は
全部男の子のせいだと思ったのです

『お前なんか生まれて来なかったらよかったのに』

と、背中に魔女の鋭い”つめ”を何度も突き立てました

男の子は近くの病院という所で
”手術”をし、ようやく助かりました

少年は意識が戻った時
魔女の事が怖くなくなっていました
いえ、どうでも良くなったと言った方が
良いのかも知れません
いつしかそんな感情すら無くなっていたのです


愚かな魔女は”とくべつなびょういん”に入り
それ以来少年は
魔女と会うことはありませんでした

めでたしめでたし」




そんな事を話す三塚の顔は
ゾッとするくらい綺麗に微笑んでいた



私は、信じられなくって怖くって
ガタガタ震えてる足を宥め様と必死だった

でも先生には絶対気が付かれちゃいけないことで
だってそれは

……肯定を意味するから

それでも、涙だけはどうしようもなくて


「な、面白い話だろ」


目の前で笑いながら話す三塚に
何を言えばいい?

今、三塚はどんな気持ちで私を見てるの?

霞んではっきりと分からなくって

言葉が……言葉がどうしても見つからない




じゃぁ

先生が誰にもやさしいのは無関心だから?

先生が女の人に残酷なのは母親に見立てた復讐?



誰でもに話せる話じゃない

何故私に話したの?

これ以上近づくなって事?


それとも……





「俺は好きとかいう感情自体ないんだよ」


そうもう一度笑った先生をただ
見てるしかできなかった


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