「昨日、裄埜くんに助けて貰ったんだって?」
唐突に掴まった、1年の時からずっと 同じクラスメイトの玲ちゃんが開口一番そう言って 詰め寄ってきた
「え?何が?」
「裄埜くんだよ!3組の裄埜 光。いいな〜 羨ましいっ!」
すごい剣幕で捲し立てられて思わず引いてしまう
「う……うん?で、でも玲ちゃんって裄埜君の事 好きなんだっけ?別の人じゃなかった?」
すると玲ちゃんは、外人みたいな大げさな仕草で 両手を横に振って
「わかってないね〜雨音は。 本命は別。裄埜君は観賞用。 現実的にムリだから夢はみない事にしてるの」
「私だって別にちょっと教えて貰っただけで 別に何もないよ」
「な〜んだ。まぁ確かに彼、誰にでも優しいしね 超カッコイイけどアレは彼女になったら大変だよ〜きっと」
私の言葉に妙に納得したようで、うんうんと 首を今度は縦に振りながら自分の席へと 戻っていった
”誰にでもやさしい”
その言葉は、私の中で別の人物を思い出させていた
やさしいって何だろう
言葉?雰囲気?
それとも単にそう思えるだけ?
相変わらず、笑っている
相手が男でも女でも関係なく
試験が終わり用紙を回収している間 この時間の試験官役の三塚が クラスメート達に囲まれている 姿をぼんやり見ていた
怒ったり、怒鳴ったりしたところなんて ホント見たことが無い
言葉使いも私達生徒にすら 丁寧
なのに甞められない程度にきっちりと 押さえることこはちゃんと注意する
その上、あのイケメンじゃ人気が 出ないはずも無いのか
いろんな意味で 他の先生と比較しようがなかった
「月島、三塚先生見掛けなかったか? お前5限目科学だったろ?」
職員室を通りかかった時、担任から声をかけられた
「いえ。見てないですけど」
そか。と一瞬考える素振りを見せた後 悪いがと付け加えられた
なんで……あたしが……
とは、思いつつも
訳わからない実験道具もどきを両手に携えて その足は届け先へと向かっていた
箱の大きさほど重くはない だからたまたま通りかかった女の私でも良いかと 思って渡されたんだろう
一旦、道具を下に置き古びた扉を開けると 雨で少しカビ臭い様々な機械と得体の知れない 標本の中を潜り抜け、目的の机に漸くそれを 置いた
「ここに置いとけば分かるって言ってたけど」
ふぅとため息を付いたとこで 教室側の扉が鈍い音とともに 開くのが聞こえた
「あ……三塚先生」
そう呼ぼうと思ったのに
「今日はダメなんですかぁ?」
……その声が聞こえるまでは
私は慌てて近くにあった遮光カーテンとボードの 隙間に隠れた(咄嗟に)
それはまるで、この前の再現のよう
無論、隠れる理由なんて微塵もない 分かってるけど
この前あんな所を見ていなければ 堂々と頼まれモノを持ってきたのだと 言えたのに
「違いますよ、神谷先生」
若しくは、三塚が話している相手が別の人なら そうできただろう
「これからずっと、と言ったつもりつもりでしたが うまく伝わらなかったですか?」
一応、耳を塞いでなるべく聞かないように しようとしたけど存外、近すぎてその努力は 無駄になっていた
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