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作品名:エゴイスト・マージ 作者:暁☆

第10回   ランチ
あの告白から目に見えて
先生は変わった

あくまで私の前でだけ、だけど

「月島〜食べるんならさっさと入れ」

お弁当を持って化学室の前でどうしようかと
立ちすくんでいると背後から先生の声が降ってきた

と、その時
別の男子生徒が教室に忘れたモノを
取りに戻ってきた

「ああ、これだろう?
取りにくると思って待ってたんだ」

先生が鉄壁のスマイルでペンケースを指差す

その生徒は’さすが先生やさしい〜’

と何度も頭を下げて
帰っていく生徒

一連の行為を横目で見ると
今行った生徒の方向をみたままこちらを
見るわけでもなく先ほどの笑顔のまま

「何だ?」

と、ぶっきら棒に言われた
おまけに早く入れとばかりに
軽い?足蹴りが飛んできたりして

「…………」

少なくとも私の前では”いい人”を演じるのを
やめたらしい







『何故、此処でメシを食う?』


忘れもしない、この教室で
初めてゴハンを食べてる私を見た
開口一番のセリフがこれだった

お弁当持参で化学室の一角を陣取ってると
自分のテリトリーに入るなとばかりに睨まれた

「大義名分はあるし。私、理系の大学に進みたいの
空いた時間に勉強を見てもらいたくって」

「で。本音は?」

「先生、見てないとロクなことしてないから
此処で見張ることにした」

「帰れ」

「一人より二人の方が美味しいって」

「……お前がな」

その後も、邪魔だと追い払うような事
何度も言われたけど
段々、無駄だと諦めたみたいで
そのうち何も言わなくなり
最近では漸くこうやって向かい合って
食べてくれるまでなった




いつものように
お弁当を口に運びながら先生を暫し観察

先生ってほぼ毎日パン食べてる
自炊してないのかな?
というか……それ以前に誰か作ってくれそうなのに
やっぱ本命の彼女いないってこと?

それとも

「パン、好きなの?」

「別に」

「モテるんだから誰かにお弁当くらい
作ってもらえば良いのに」

ぽそっと何気なく呟いた言葉に

「他人が作ったものとか食わねぇよ」

先生が吐き捨てたセリフにハッとする

お弁当を突く手が止まり
私は自然と俯いてしまった



今……



地雷……踏んだ?





子供に死んで欲しいと願っていた母親
そんな人間がまともな食事を出すだろうか

親が出すモノを空腹と疑念とで葛藤しながら
口にする幼い子供の姿が脳裏をかすめる


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