お母さんのエサを運ぶ、回数も減った。時には一日中帰らない日もある。 得物が取れないのかも知れないけれど、生まれたバッタも毛虫も、もう 大きくなった。 僕が、飛び立つのが 遅れれば、得物は大きくなり逃げ足も速くなる。捕まえるのもむずかしいんだ。 あせった。自信がない。一人で母さんをまっていた。 飛ぶぞ、今日は飛ぶぞ、と思いながら。 僕は、一人になった。母さんは、もうかえって、こないんじゃないだろうか。心配で、空ばかり見ていた。 風がある日は、白い雲が、丸まったり、一面に広がったりして、流れるという事が解った。 灰色の、雲が、空を覆うと、雨が降るということも。 まってる時って長いよね。心細いって辛いよね。 僕は待った。 母さんの、姿が、見えると、フウと、安心のためいきをした。 母さんは、帰って来てくれた。 藪の下を、通り抜けた音がする。ガシッと、巣をつかんだ。 母さんは、得物を渡しながら、やさしい目をしたんだ。 「こうするのよ。」 止まったままで、羽根をゆっくり動かした。僕はまねをした。 「ちからをいれるのよ。」 「え、ちからをいれる。」 「危ないよ、母さんが、危ないよ。」母さんは笑った。 母さんは大丈夫よ。逃げるのには慣れているわ。」 「お前は、自分を守る練習をするのよ。お母さんは、お前の尾羽根が、心配だわ。」どうして、お前だけ光るのかしら。」 母さんは、僕くを見た。 一日に何度も得物を取って、運んでくる母さんの緊張した表情とは全く違うものだった。 今は、僕だけだ。心が 落ち着いているのがわかった。 「お前は誰よりも、速く飛ばなくてはならないよ。」 両方の、大きな羽根が、僕を包んだ。 僕の、頭の中が、スッキリと整理された。 「僕は、飛ぶよ。注意深く、飛ぶよ。」 「母さんが、どうやって、僕たちを、敵から守ったかよく知っているからね。」 僕は、いつも見ていたんだ。 「あなたは強い そして やさしいんだね」。 そして 僕は 飛び立ったんだ。
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