落筆
最近、広く知れ渡っているあの人たちの夢、私も同様の人間である。 最近、広く知れ渡るあの人達が遣う言葉、私も同様に遣ったりする。 最近、広く人気を知らしめたあの流行歌、私は大嫌いである。 なかなかに、いや絶対に染まり切れないこの私はまるで、人気の引いた夜道の路地裏にある、場末ながらに活気のある、屋台で呑んでいる様子がある。食べれば余計に寂しく、呑むだけの方が保身に気付く。 ”今の私等の世代、食事(メシ)は沈黙の間にするものではないらしい。私は流行遅れではなく、ただの楽天家だ。現代に適する落筆をかきなぐる事は、漆黒のような私の人生を、ただひたすら闊歩することに等しい。隠すことができない私の臆病である。”
季節にまた冬が巡る。私は服装をかえようとしつつ、今までと同なじように、大学の門を潜る。年寄りの警備員は、華を添えようと躍起になっている私の顔を見て、立っている。気にせずとも良いのだが、難しい顔をしながら、ずっと歩く私が見える。昔ではない。今を生きている私は退屈と、臆病と、勇気とは違う面倒くさがり屋の節を持ちながら、遠い光に希望を持っている。昔記した字は今、この白紙に乱脈ながらも姿をかえつつ残っている。そう、ただ私がかわったのではなく、字がかわったのだ。それだけのこと。この世間を生きねばならない。どうしても止まらない妄想を持つ私は、まだ生きている。
「遊撃」 時期だ、この時期だ。だんだんわかってきたぞ。こう思うようになったら、もう、その時期なのだ。微笑にかられて、私に生きられる筈もない、勝手に決めるのはやはり私である。私の人生だからどう費やしてもいい。この時期だ、人間は(ひと)は、自分のことながらに私のことも、少しはわかるみたいだ。遊んでいる内にでも夕焼けは来て、やがて夜も来る。無情でなければ人間は、やはりずっと遊んだままになる。神様は人間(ひと)と距離を置く。神と、人間と、自然の間で、どんな規範があるのかは知らない。でもずるい。ただ試すだなんて。...再臨というのは、私の知らない時期に来るものであろうか。
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『傷ついた者を笑う者は、 傷ついたことない者だ。』
『傷ついた者を笑う者は、 その同じことで、傷ついた者だ。』
「死海」 いつしか、人間(ひと)の世の中に堕ちた。肉は肉を好み、霊は肉を惑わす。人間が創り出した愚かさは、泣くしぐさをしながら海に溺れ、笑っている。まわりを見据える者は、自分を自分が作り出した光に翳(かざ)してあたかも正しいかのように見せかける。何も知らない輩の方が罪はないのだ。知ったかぶりを武器にして滅びを見る者にこそ、影はある。いろんな打算が飛び交う中、歩いている人間は、どこに向かっているのか。その方向がその中にいる者にわかるのか。神様が示唆して、直接に告げた者にしかわからないその道理、日頃遊び過ぎている自分にはきっとそれに気付かない。心が鈍っているため、言葉は失くなるだろう。本来何も言えない筈の私は今日も明日もものを言い通す。他人(ひと)を羨みながら生き続ける欲は、大きな陰の中にその影があるから、それに気付かず偽善の光を放つ者に惑わされ、やがてあきらめようとする。頭を抱え込んだ輩は、見上げた時に違う偽善を見る。何も知らないきれい言を並べたまま、真実を捜そうとする。狂人にでもなりそうな程の勢いで、この輩はまた、知らない臆病にかられる。
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あの鳥はまっすぐ生きている。 人間は生きることを曲げてしまった。 神様が本来創った人間の姿になりたい。 どんなものなのか。 一緒だとしても、私は、なりたいんだ。
「我が悲しみ」 真夜中に”カサッ”と音がする、マムシの逃げる音。 (太宰治「もの思う葦より」)
順位を競えば、いいだけの流行。なんでも1位になってしまえばその唄ってる人は、皆に知られる。 影で生きるのは、それをただテレビで見ながらお茶でも飲むのだ。そしてまわりは、皆がとてもいい、と奇妙なほどもてはやせば、その雰囲気をこわすまいと自分もそれに沈めるのは簡単。同じような唄を同じような人が唄ってる。もしかしたら、ずっと昔から、そうだったのかも知れない。でも、いいじゃないか、で人の人生それぞれは成り立っているのか。流行は未だわからず。
明日もまた街を歩かねばならぬ。つまらないことでくよくよ悩むな、とは言い聞かすが毎日、この風景を見てるんだ。そうもいかない。正直死にたい気分だ。アルコールでマヒさせて、手首を切る、ってのもいいかも。何も飾る気はしない。飾ったところで本質はかわらないのだから、かえって恰好悪いだけだ。近頃の若者のセンスは、外見ウルトラマンにとらわれ、幼稚になってしまった。僕の友人も大体そうだ。僕も、そうなのかも知れないが、誰でも自分のことは客観的に見切れない。..ああ、それよりもまた明日、あの大学(ばしょ)に行かなきゃならぬ。気の滅入るあの場所へ。まだ疲れる電車の中を歩く方がマシなくらいのあの場所へ。かと言って家にいれば母が悲しみに、また物憂い、僕もやりきれなくなる。本当に行き場所がない僕は、本当はそんなこと考えちゃいけないのだ。でも、あの”本当の自分..”てのがその度頭に浮かび上がる。幸福とは何か、考える程僕自身、美しくもなったんだ。
「虫」 ブーンと虫が一匹、畳の上におち、羽根をバタバタさせている。早く飛ばなきゃな、なんて感じにバタバタさせている。僕はその虫をつかまえて、本でバシリとひとつたたいた。その虫はしゃべらずさっきより鈍くバタバタ..と動いていた。僕は残酷にも、またプラスチックでふたつめ、バタンとたたいた。その虫はほとんど動かないくらいに足を動かしてどこかへとりあえず逃げようとしていた。最期にプラスチックでその虫の同じところをパシンとたたいた。ついに動かなくなり、その虫の命が消えた。その虫がさっきまで使っていた体が、プラスチックの上に横たわる。
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