百舌
又、腹の具合が悪く、気分が冴えなくなってきた。しかし、今、倒れる訳にはゆかない。この先には、自立の為の希望が、六月まで待っている。どうしても、倒れる訳にはゆかない。風に眩暈を覚えるのは、せめて、六月以降である。病魔に侵されると、どうしても、孤独に陥る。朴訥な姿勢の裏には、人の零落には近付かぬという、見知らぬつよさが、秘められている。私は、それを覚える。今まで、幾度か、身に染みて来た苦痛である。(今、仕事場の友人から電話が掛って来て、明日、月曜日に”夜勤”を代わってくれ、という。)月曜日と言えば、朝一限目から大学の講義があり、その次の日には、二限目から四限目まで講義がある。しかし、友人を助ける為、金を儲ける為、等の助長に押されて、その”夜勤”を代わってやりたい。しかし、ここにて私は、これも、神の助言と採ってしまう癖がある。もし、そうであれば、私が、ここで、夜勤に入って見ても、体調を崩して、大袈裟な事にはならぬ筈だ、などと。勝手に、思っているのである。気分が悪い。息が、とても苦しく、こういう時の模範的な、苦しさだ。頭の左側も少し、痛い。否、とにかくもう、眠らなければ。私は、臆病な故か、苦しさを覚えたこのような時、こうして文を書かねば居れなくなってしまう癖が付いたのだ。今更、耳に付いて来るT(歌手)の歌が、最近、体調を崩してコンサートを中止したというN(タレント<アイドル>)が、ハードなスケジュールでありながら、又、ドラマの仕事を受けたという、(以前にドラマの仕事を受けた時には、睡眠時間が丸二週間ずっと、一日二時間だった、という。その後も何本かのドラマを熟していたが。)Na(歌手)は以前に、喉を痛め、悪化させて、”ろうれいきん”なるものに犯され続け、そして、最近も又体調を崩し、Tと同じく、コンサートを中止したという。歌手にとってコンサートを中止するというのは、余程の理由があっての事であろう。最近観たミュージックビデオの中では、Naは、過去の病魔に懲りたのか、栄養を考慮したミックスジュースをきちんと作って、ゴクゴク飲んで、グラスが照明で光る位まで呑み干していた。(かくゆう私も、今晩、仕事を終えて帰って来てすぐに、ミックスジュースを作ってグラスの底が見える位まで飲み干していた。)何にせよ、健康とは人にとって必須のつよみと成る。幇助、叱咤、放埒、上手い具合に回る。 明日の風は、きっと、寒かろう。羽織る物を羽織って、温かくして、世間に出てゆくことだ。世間に出れば、誰も、お前の為に親身になってくれる者等、居ないだろう。自分でつよく立ち直るのだ。否、皆、そうしている。そのことこそが、お前につよみを与えるのかも知れぬ。自立。その元に、行くのだ。やがては、温かくなる。温かくなった時、お前は、又、解放される。又、放埒。
「ゆめ」 今朝未明、私は、女を味わった。「味わった」とは言っても、女の体を乗っ取ったのだ。夢。現実から離れた夢。ものかきには、うってつけかも知れない。(飾らず)。 夢の中で私は、女になっていた。否、なっていた、と言うより、装った、と言う方が正しい。その以前にも、何か夢を見ていたのだが、書く気には成れず。私の居る場所は、マクドナルドみたいなファーストフード店だった。隣のソファには、女子高生の群れがいる。屯しているのだ。私は、その横で、一人で座っている。私の恰好は、よく思い出せない。隣の高校生が着ているような制服であったのか、又、今見えて知る服装だったのか、未だ知らない。私の年齢は、定かではなかった。そして、その夢の中の私の隣に、その夢のメインとも言える、気持の悪い、一人の男がやって来る。その男の身形、風貌、とは、髪は坊っちゃん刈りっぽくて、背は低く、同じく、高校生と似た制服を着ており、顔は人を苛々させる程の童顔である。その男は、なよなよと私に寄り付き、私が座っているすぐ横に座った。そして、直様、話し掛けて来るのである。軟派と言うよりは、ストーカーのような身振り話し振りで、煽って来る。そこで私は、その男のしつこさに対して、底浅い悪寒を一度味わった。私の女性的感覚とでも、言いたい。その”しつこさ”は続き、私は、遠くを見ながら、一度、言い訳をした。もうすぐ、待ち合わせをしている人が来るので...、既に、暗黙の内に、その「やって来る待ち人」というのが男であるという事を、解らせてくれる。ここで、力の強い男であれば、相応の安心を得られるだろう、と、又、自覚させられる。そのなよなよした男は、それを聞いて、間もなく、立ち上がり、直ぐ横の、女子高生が囲む空けられた椅子に、よくおばさんが、混んでいる電車の中で無理矢理腰を押しやって座るような、あの恰好で、無理矢理、座った。しかし女子高生は、そのなよなよした男を見ても、嫌な表情はしていなかった。私は、少し、その場から外れた。時計を見るや否や、私は、吸っていた煙草を灰皿にもみ消して、立ち上がった。その隣では、女子高生達に、私の美形振りを横目でちらちら見ながら、あの男は喋り掛けていた。私は、そのまま出て行き、現実でも覚えているその路地を、一人で歩いて行った。弓丘のバス停まで下る、あの暗がりのある、緩く、坂になった道だと、記憶している。私は、その時、自分が男であると、勝手に思っていた。しかし、その時、ふと、あの男の事を思い出した。はっ、もしかすると、さっき、私は出て直ぐ、右に曲がって来たから、この道なりをあの男が知っていたなら、直様、お喋り等止めて、追い掛けて来るのではないか、あの女子高生よりも、犯人は私を選んだのだ。そう思ってから、咄嗟に、女の態に戻り、一瞬の悪寒が、背筋をぞぉっと走った。その悪寒は、予感を的中させた。何やら黒い影が、向こうの暗がりから走って来るのである。暗闇が迫って来る感じであった。そして、その追って来る人影の頭辺りをよおく見てみると、知っている坊っちゃん刈りなのである。窮地に追い込まれた鼠、草むらで闇に迫られた鼠は、その時それでも勇気を奮い、窮鼠猫を噛んだ。私は、男に戻ったのである。耽弱のつよみ、よわみ、は惑う事なく、相手に突っ掛かる。暗がりから、ようやく、その顔が見せた人影は、さっきと同様の童顔であった。私はくるっと振り返り、先程までの細々しい女声とは違う、男性の声を発した。「てめぇ、このやろう、」私は、直様、その男の胸元を掴み、草むらの中に、押してやった。その童顔は、咄嗟に、息をつっぱり、不良振って対応して来た。私が「殺すぞ」と言えば、あの男は「殺してみろよ。そんなことすりゃ、捕まるぞ。」と、余程、怯まなかった。すったもんだの末に、夢は消えた。
今、階下から、テレビのニュースで、老婆が一人、胸元を刃物で刺されて死亡した、という声が流れるのが聞える。
女が、集団で、行動する訳がわかり。勇気を奮った、つよさもわかり。
華やかさ。脆弱。力じゃ負ける。
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