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作品名:ふたつの心臓 作者:SO-AIR

第7回   7
.13 令二


「今度のバーベキュー、彼氏も連れてくるんだって?」
 俺は昼飯を食っている時に、バーベキュー幹事であり、俺の尊敬するチームリーダーである鈴木さんから、その事を聞いた。
 先日の、志保ちゃんの怪我が頭を過ったのは言うまでもない。その加害者たる彼氏が、会社のバーベキューに顔を出すと言うので、驚いている。
 まさか皆の前で志保ちゃんに手を上げる事など無いだろうが。
 
「うん、みんな家族連れで来るし、どう?って試しに訊いてみたら、来るって。私も意外でびっくりしたんだけど」
 濁度のデータを見ながらブラインドタッチでテンキーを忙しなく叩く志保ちゃんを暫し眺める。
 
「何?」
 俺の視線に気づいたのか、こちらに顔を向ける事無く話す。
「いや、彼氏、と同棲してるんだもんね。家族みたいな物だもんな」
「ん、そうだね」
 そこに俺が入り込む隙なんてない事は分かっている。勿論入り込もうなんて汚い事は考えちゃいない。
 ただ、時折暴力を振るう彼にぞっこんな志保ちゃんを見ていると、そこに割って入りたくなる。
 俺は暴力振るわないよ?どっちがいい?なんてね。俺は志保ちゃんに惹かれている。これは紛れもない事実だ。

 それでも志保ちゃんは今の彼を選ぶんだろう。
 暴力を振るう事をも帳消しにしてしまうような魅力があり、何か埋められない過去の経験を埋めてくれるような、そんな彼氏なんだろう。
 そんな風に考えていると、段々と彼の事が「良い人」の様に思えてきた。
 バーベキューでは話し掛けてみよう。確か歳は俺と同じだったと記憶している。



.14 志保


 明良が安心してくれるならいい。そう思ってバーベキューに誘った。
 誘った時点でもう、明良は安心しているだろう。
 私がいくら鈴宮君と仲良く喋ろうが何だろうが、そこに「彼氏」として明良がいれば、明良は満足だろう。

 そんな風に簡単に考えていた。後々この考えは間違えだったと気づかされた。


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