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作品名:L.e.v.e.l. 作者:赤鉈 塩

第9回   Level.9(代替原稿並行表記)
                                                 BGM:No Logic
・夜哨 ― 二人か三人で三〜四交代制 未登録の者も極力参加する
・籠城戦の準備 ― 物資の在庫状況把握 配給制(出し惜しみするのは×、不安を煽るだけ)
・近隣住民の安全確保 ― 但し、余裕がある場合のみ 各家庭にも充分備蓄はあるので暫くは大丈夫 
・―                                    

「うーん、あとは・・・、んん、こんなもんかな」
 生徒会の役員や校長、防災当番の教諭はさっきからぽかんとしている。本物の軍人が立てた作戦には程遠いかも知れないが、軍に招集されて作戦に参加した事があるので、目の前の、レベルに登録もしていないド素人に比べれば遙かにマシだろう。
 む、夜哨はちと古いか?何語だ?略語?〈夜〉・間・〈哨〉・戒、か。いかんな。日本語が乱れておる。
 『夜哨』を『不寝番』に書き換える。余り専門的な言葉を使うとミリタリーマニアと思われてしまう。
 しかし、アレが出るようになって十年以上経つのに、今までよくもこれだけ無関心でいられたな。お目出度い。戦えないのは仕方がないとしても、もう少し理解を示してもいいのではないだろうか。まあ特進コースのエリート思考の奴らの中には、奴らなりに国を良くしよう、なんて心意気のある者もいるのかも知れないが・・・。
 しかし今、現状で必要なのは戦士だ。エリート層も必要っちゃ必要だがそれは飽くまで、ずば抜けて優秀なほんの一握りの連中だけで、凡人に毛が生えたような程度の奴は・・・。
 はあ・・・。駄目だな、会議は苦手だ。大体不毛過ぎる。何なんだよ、一時間ゾンビとL.E.とレベルの基礎講座って。めんどくさっ。RPGのチュートリアルかっ。そんな事お前ら知っても役にゃ立たねえだろうがよ。
 ・・・いかんいかん、段々ヒートアップしてきている。落ち着け・・・。
「もし何か分からない事があったら、質問受け付けますが」
 にっこり。・・・こいつらが質問などする筈がない。最優秀生徒とはいえ所詮G組。そんな奴がこの場にいる事自体が例外なのに・・・。誰も見ていなければ、溜息をついて肩を竦め、首を横に振って、お手上げのポーズをしてやりたいが、我慢した。
「理解して下さった、という事で・・・よろしいですね・・・?」
 静まりかえる場内を見回す。誰もシンゴと目を合わせようとしない。
 ふん。大体、こんな状況で会議など無意味なのだ。戦うのは現場の人間、怖い思いをするのも怪我をするのも不測の事態に遭うのもその責任を負わされるのも全部現場の人間。上の人間は良い成果だけを自分のものにすればいい。会議など飾りです!偉い人にはそれがわからんのですよ!! ・・・。あー、ちょっとすっきりした。
 眼鏡の縁をぴしっと揃えた指先で触りつつ、教科書に載せたいような正しい手の挙げ方で、一番奥の席に座っていた少女が手を挙げた。
「シンゴさ、ン、ン。君。わたくしも、その・・・不寝番? に志願したいのですが」
「んが!? か、会長!? 危険です! このような事は、」
「いえ、是非やってみたいのです。わたくし、自分がいかに世間の事を知らずにいたか痛感致しました」
「ああ、いいんじゃないか? 特に危険はない。あー、階段の上り下りぐらいかな、一番難しいのは。随分高いからな。二階ぐらい? かな」
「よろしくお願いします。シンゴ君」
「え? オレ? ・・・いや、そうだな。VIPのボディガードって奴だな。OK。アキラさん、オレとサユリ・・・会長二人で、宜しく」
「かしこまりました」
 あ、そーだ。一番大事な事を議題に挙げるの忘れてたな。まあ、明日でいいか・・・。

                BGM:迷的サイバネティック
「シンゴ!」
「どうした? ヤス」
「L.E.からメールが来たんだが、これ、見てくれ」
「 ? 文字化けしてますわね」
「!? これは・・・! ちょっと見せてみろ。・・・うん、うん。これ、チートコードだ」
「チートコード?」
「ああ、お前だけか? これ来たの」
「いや、みんなに一斉に」
「こりゃあ、相当切羽詰まってんな」
「どういうことなんだよ。てめえだけで納得してねえで教えろよ」
「うーむ。まあ自分で何とかしろって事だろうな。試しにカスタム画面を開いてみろ。説明するより実際やってみるのが速い。どうなってる?」
「え? これって……?」
「 ? なあに? どうなってるの? わたくしにも拝見させて下さい」
「会長にはあとでゆっくり教えます。初心者は先ず武器の扱い方から覚えて貰わないと。順番、って奴ですね」
「強化リストが全部解放されてる? どうなってんだ?」
「それだけか? ポイント見てみろ」
「あ、なんだこれ? バグってる?」
「無制限になってる筈だ。試しにやってみろって。それと、みんなにこの事教えよう。忙しくなるぞ」
「だから何でそういう結論になるんだよ。わけわかんねえ」
「そのメールL.E.から来たんだろ? チートコードはL.E.非公認の改造コードだ。使ったのがバレるとペナルティがある。それなのに、っていう事さ」
「チートって、狡いって意味ですわよね? c、h、e、a、t」
「おお、そうそう。そのズルを使えって事だから、とんでもなくヤバいって事だよな」
「ちょ、マジでやべえじゃん! L.E.のサポートが無いって事かよ? ど、どうすんだよ?」
「心配すんな、その事を今話し合ってきたんだから。後方支援は上の奴に任せて、お前達は戦う事だけ考えろ」
「あ、ああ」
「いいか、他の奴にはチートコードの事だけ教えて、今言った事は詳しく教えんな。お前がビビるくらいだ。全体の士気に関わる」
「う、うぐ。ビ、ビビってねーよ!」
「ああ、そういう事にしとこう」
 ・・・やっぱり一番大事な事は話せなかったな・・・。L.E.は、何かを隠している、という事は。
 シンゴなら覚悟は出来ている。
 だが、こいつらには余りにも荷が重すぎる。
 護ってやらなければ。こいつらは。
 もう誰も死ぬのを見たくない。
 もう誰も、オレの目の前で死なせるものか。
 絶対に。

             BGM:メテオ
 目の前には、一面に拡がる満天の星空。手を伸ばせば届きそうな、とか、今にも降ってきそうな、とか、在り来たりの表現しか思い付かないが、文才が無いんだから仕方がない。本当に、人間として生きてるのが馬鹿馬鹿しくなってくる。この光は、人間が出て来る前からこうして宇宙を照らしているんだ。今この光が途切れても、それに気付くのは何万年後、という遠い場所から。マジ宇宙ヤバイ。て奴だ。
「もう、シンゴさん。寝っ転がってないで早くこれの使い方を教えて下さい」
「適当にやってご覧」
 今、シンゴとサユリは、塀の上に突き出した足場に登って、不寝番をしている。右にも左にもずらりと同じような足場が組まれ、その上には人影が幾つか見える。みんな真面目だな。関心関心。
「適当も何も、本当にさっぱり」
 見ると確かに銃身の方を握って、繁繁と手の中に隠れるサイズのそれを覗き込んでいる。
「貸してご覧」
 サユリからデリンジャーを受け取る。カテゴリー:ハンドガン。極端に短い銃身と四つの銃口が特徴的な、レベルに登録すると先ず最初に手にする事になる射撃武器だ。普通はポイントが貯まったら、早々に自分にあったカテゴリーに切り替えるのだが、レベルに登録しただけでも、様々なサービスが受けられるので、戦闘はせず、このまま、という者も多い。俗に言うペーパーユーザーという奴だ。配達業、営業職、一般の主婦なんかに多い。というか、レベル登録者の中で一番多いのがこの部類だ。仕方がない。それに、レベル登録が多くなれば、ハンターにも多くの恩恵があるので、全く問題ない。それはいいんだが・・・。
「こう」 銃把を握る。
「これを、押す」 リロードボタンを押す。
「サイティング、大体の狙いを定めて」 塀の下の暗闇に銃口を向ける。
「これ、引く」 トリガーを引く。
 パシュン、という玩具みたいな音を立てて、暗闇の中に光の筋が吸い込まれていく。
 五回目に引き金を引くと、コマンドが拒否された事を訴える耳障りなビープ音が鳴る。
「う、そうだった」 どノーマル状態だった。
「リロードリロード。これ、もう一回押して。あとは繰り返し。はい」
 シュートタイプのカテゴリーを触ったのは久しぶりだ。いや、初めてだったかな?
「あ、あの。どこを狙えばよろしいのですか?」
「下だったらどこでも。黒いの全部そうだよ。ふふ、試しに照明弾撃ってみる? あ、そうか、どノーマルか」
「一、二、三、四、で、このボタン、ですね?」
「そう、リズムを体で覚えるといい。休み休みね。君がちょっとぐらい頑張ったって、追いつきゃしないんだから、そう割り切って気楽に構えて」
「シンゴさんは?」
 毛布にくるまった体を寄せてくる。
「?」
「何もなさらないんですか?」
「ああ、まあね。オレは昼間頑張ったから、今は休憩時間だ」
 戦士にとっては休むのも仕事の内だ。というよりも、こんな場所ではソードユーザーに出来る事はない。
「・・・これ、本当に当たってるんですか?」
「ん、ケータイ出して。ポイントが0じゃなくなって・・・。そうか、チートが入ってるんだっけ。じゃあカウンターが回ってる筈だけど。ほら、この数字」
「これを、今わたくしが・・・?」
「ふむ」
「何というか、この人達は、その、いいんでしょうか・・・? ・・・うまく言えないけど、何となく可哀想」
「う〜ん。そういう人もいるかもね」
 実際に間近で見た事がないなら仕方がない。
「先程の説明で仰っておられましたよね。死者の魂って。その、つまり・・・」
「L.E.の説明を丸呑みするなら、ね。あいつら、企業秘密が多過ぎるんだよな。全面的に本当の事は言ってないと思うけど、まあそれでも」
 シンゴは身を起こして、下の黒い海を一瞥する。
「もしオレが死んだら、死んでもまだ動き回らなきゃならなくなったとしたら、いっそぶっ飛ばして欲しいって、そう思うけどな」
「・・・」

 眼下の蠢く暗闇に、魂を浄化するという流星が降り注いでいる。ウソかホントか知らないが、それでも、その様は頭上の星空と相まって美しく、どこか胸を熱くする光景で、シンゴを少しセンチメンタルな気分にさせた。
 センチメンタル序でに、昔の事を思い出した。
 他の奴は遊び半分だと思うが、シンゴがレベルを始めたのは、義務感からだ。
 シンゴの両親はL.E.専属の研究者だ。小さな頃から留守がちで、近所のお姉さんにお守りをして貰っていたが、このお姉さんも、やはり両親の同僚で、シンゴが手が掛からなくなると、お姉さんの娘と一緒に二人で過ごすようになった。幼馴染みという奴だ。こいつについては、後で覚えていたら、もう少し詳しく述べる。
 そんな環境なので、シンゴは自然に、この世界で起きている異常な事態について、奴らの事について、漠然と理解していたし、何となく自分にも関係があると、そう思っていた。
 シンゴが、両親のコネを利用して年齢を偽り、無理矢理レベルに登録したのはある意味必然と言える。
 シンゴはひたすら奴らを倒しまくった。近所のゾンビを狩り尽くすと、休みの度に少し遠くまで狩りに出掛けた。母親に日本中に親戚がいると知ると、そのツテを辿って、長い休みなどに一人で身を寄せ、その辺りのゾンビを狩りまくった。シンゴの行っていない地域は、沖縄ぐらいだろう。外国にも行った。
 多分、そうすれば、あいつらがいなくなれば、父さんと母さんは、自分達の元に返ってくると、子供心に思っていたのかも知れない。今になって思えば、可愛いものだ。
 今、シンゴは虚無感に包まれる。カンストするまで必死に狩ったのに・・・。自分のした事は全く無意味な事だったのか・・・?どうなっている・・・?もしかしたら周忌みたいなものがあるのか?一番最初に奴らが出て来たのは十六年前、そいつらを何とかして、人類は立ち直った。しかし再び、奴らは大量に発生した。それが七年前。その第二次ゾンビ大戦には、シンゴも参戦した。そして今・・・。・・・いや、倍数が合わない・・・。いや・・・、しかし・・・。・・・。

「・・・さん。シンゴさん?」
「んあ? どうした?」
「交代の時間ですったら」
「ああ、そうか・・・。うん」
 考えても仕方ないか。・・・あ、改造の仕方を教えてない。カテゴリーチェンジの事も。
 ま、いいか。きっと彼女はもうここに登る事はないだろう。いや、登って貰っては困る。
 彼女にはしっかり後方支援を担当して貰わなくては。オレ達が安心して帰って来れるように。

                                              BGM:鎖の少女
 その夜、シンゴは夢を見た。
夢なのだが、妙に現実感のある、不思議な夢だった。フロイトによれば夢は、潜在意識を映し出す鏡だという。はてさて、先生はこの夢をどのように診断なさるのやら・・・。

『・・っと見つけた・・・』
 闇の中で少女の声がした。聞き覚えのない声だ。しかし確信はない。
『ヒナの愛しい人。運命の人。どうかヒナを救って下さい。シンゴ様』
 救うってどうやって・・・?
『お声を・・・声をお聴かせ下さい。ヒナの名前を呼んで・・・』
 ヒナ・・・?それが、君の名前?
『ああ、やっと呼んで下さいましたね・・・ではそちらへ・・・』
 ふと気付くと腹の上に裸の少女が馬乗りに乗っていた。そして、自分が【自主規制】していて、それは少女の【自主規制】に【自主規制】ているのを知覚する。少女の顔には見覚えは、無い。無い・・・筈だ。多分・・・。
『ああ、シンゴ様。凄い、大きい』
 まだ夢の続きなのか?しかし、夢にしては異常に感覚がはっきりしている。少女の細腰を掴む。手はその白い肌の温かみを感じる。少女は腰をぐりんぐりん、と動かして、シンゴの快感をぐんぐん高めていく。
 ? ?? ??? ???? ・・・!?
『はあ・・・。確かに、シンゴ様の遺伝子、インプリンティング致しました』
 !!? !!!? !!!!?
『申し訳ありません。でもこのようにするしか・・・あ、もう行かなければ・・・何時か、必ず・・ンゴ・ま』

 ・・・シンゴは夢精していた。
 何ヶ月振りだろう。数時間前彼女の中にたっぷり出した筈なのに、まだ出て来るモノがあったのだろうか。
 これはもしかしたら自慢に聞こえるかも知れないが、シンゴが夢精すると、パンツではなくシャツが濡れる。
 うん、言わなければ良かったと少し反省している。しかし、朝からシャツを洗う姿は特に怪しいものではないのでこういう時はほっとする。しかし・・・。今のは何だったんだろう・・・?やはり無意識のうちにリビドーが・・・。
 声・・・?見知らぬ少女とセックス・・・。後は・・・インプリンティング?オレは一体どんな潜在意識をしているんだ?
 はあ・・・今日は大事な仕事が、やるべき事があるのに・・・。朝っぱらからまったく。


 ※ ※ ※ ※ ※

to:灰出部長
件名:代替原稿
本文:以前部長が眉をひそめておられた部分、代替原稿が完成致しましたので、遅ればせながら提出致します。

 − − −
BGM:ピンクムーン
 その夜、シンゴは夢を見た。
夢なのだが、妙に現実感のある、不思議な夢だった。フロイトによれば夢は、潜在意識を映し出す鏡だという。はてさて、先生はこの夢をどのように診断なさるのやら・・・。

 シンゴは空を漂っていた。読者は知る由もないであろうから敢えて記しておくが、シンゴは空を飛ぶことはできない。・・・。何をか況んや、である。つまり、一瞬でこれは夢と理解できるシチュエーションであった。だが、こういう夢でよくある、夢とわかったら落ちてしまう、という事もあるのでは、と思い、こういう設定なんだ、と念仏のように唱える。
 下を見ると、随分高い所を飛んでいる。廃墟と化して十数年経った街並みがジオラマのようなサイズで眼下に広がる。灯火を失ったコンクリートジャングルがこの時間でも見えるのは、月が出ているからだ。地平線近くに、今さっき登ったばかりの三日月が、矮小な人間共の営みの残骸をニヒルに嘲笑っている。a→z。
 シンゴは自分の体がただ闇雲に漂っているのではなく、ある方角に向かって飛んでいる事に気が付いた。その方向には――
 誰かがうっかり体当たりした飴細工のように、或いは、思いっ切り引き絞った弓のようにぐにゃりと湾曲した、赤と白のおなじみのタワー。
 元はちゃんとまっすぐ立っていたらしい。いや、当たり前か。前衛アートにしては巨大過ぎる。そのタワーの真ん中辺り、当時展望台と呼ばれていたという部分に向かっているようだ。
 ふと、シンゴの耳に微かに何か聞こえてきた。歌だ。
 目の前に拡がる、前衛的な奇妙さを振りまきながらも、荘厳さを湛える濃紺のグラデイションに相応しい、不思議で、且つ魂を揺さぶるような強く優しい歌声。・・・んむぅ。あまり上手い表現ではないな。まぁ、仕方がない。虚構を重ねるのが小説なのだから。
 展望台の傾いた庇の上に、少女が座っていた。オリエンタルな雰囲気の、美しい少女だ。輝くように白いワンピースドレスを着ている。歌声はこの少女のものだった。
 シンゴはこの歌声に引き寄せられていたのだ。ひねくれ者のシンゴに似合わず、素直にそう悟った。
 普通に会話できる距離まで近付くと、少女は歌うのをやめ、にっこりと微笑んで言った。
『やっと、見つけた』

 ※ ※ ※ ※ ※

                  BGM:ゴシックロリィタドレスアップズ
「ごへ!? 何じゃそのデカブツ!」
「んー? なんかねー、かたろぐ見たらねー、あったからねー、ソクガイしたの☆もう、ホレちった」
「マジかよ? あったか? こんなの」
「エヘヘ☆」
「マジでそれ軍用とかじゃねえのかよ。ゴツすぎっだろ?」
「そおかなー?」
「いや、そもそもよく持ち運べんな。てゆうかまずそこにツッコめ」
「いーでしょお?」
「ああ、いいんじゃないか。マークが付いてる。正規品だよ。ジョークユニットって奴だな」
 カテゴリー:ガトリングキャノン。ランク:A。制式名称は・・・鬼軍曹?なんじゃそら?
「みんなは? どうだ、チートコード、活用してるか?」
「おう。こいつみたいにカテゴリーまで変えた奴はいねえけど、上のランクの奴にして、バリバリ強化して、超いい感じだぜ」
「あ、そういえばヘビーマシンガンってあったな。アレを塀の上に据え付けて・・・」
「いやいや。ねえってンなの」
「あれ? オレのカタログにだけか? そうか、フルコンプまではしてないんだな」・・・ふぅむ、成る程、制限付きのチートコードか。考えたなあいつら。
「?」
「上に登る奴に最短ルートを教えとこうかな。多分ちょっと調べたら分かる筈だ。カンナのガトリングみたいな奴までの道距は遠過ぎるかもしらんが、マシンガンぐらいならすぐだろう。よし、早速仕事があって助かった」
「なあ、シンゴ……。俺も上上がってみたんだけど、なんか一向に減る気配がねえぞ……? ヤバくねえか?」
「ん・・・そ、そうだな・・・。うん、その事でちょっと試してみたい事があるんだ。そうだな、Aランクがごろごろいりゃあ、何とかなるかもな。よし、いいだろう。あのな、もう一回昨日みたいに外に出てみたいんだ。今度は出来るだけ沢山でな。新しくなったリストを用意してくれ。メンバーを選抜する。朝礼をしよう。朝まで登ってた奴以外はみんな呼んでくれ。ああ、そうか、最短ルートを調べなくちゃな。一時間後・・・、いや昼からでいいか。昼飯食ったら朝礼・・・とは言わねえか。まあ、そんな感じで頼む」
「新しいリストは誰に出せばいい? お前んとこ? アキラさん?」
「いや、アキラさんには上の奴のだけやって貰おう。外に出るメンバーは、みんなで話し合って決めよう」
「わかった」

               BGM:Hello, Worker
 ここで、ネタバレに気を遣いながら、或る程度レベルについて述べておかなければなるまい。
 むう。先ずどこから説明しようか。ポイント制度についてかな。これは勿論ゾンビを倒す毎に手に入るモノで、レベルの根幹を成すと言っても過言ではない。装備やランクの高い武器、カテゴリーチェンジなどレベル関係でも大量に消費する。オプションや強化のためにも使われる。その他、駄菓子や飲み物、アクセサリーなどの雑貨、学生向けには文房具、果てはファーストフードのクーポン券など、実に様々な分野で利用できる。そもそもレベルというシステムがゾンビを減らす事を目的としたものなので、兎に角ゾンビを倒してポイントを手に入れ、そして消費する、というサイクルが成立するように出来ている。『その他』の部分については、経済がダメージを受けない程度の些末な物品ばかりのラインナップであるものの、換金性の高いものと言える。従って、ポイントは厳しく管理され、例えば、アクセスしたままゾンビを倒さないでいると、恐ろしいスピードで激減していく。
 当然、こんなもので喜ぶのは学生ぐらいだ。後は、まあ、住む家もない者等だろうか。L.E.に申請すれば、誰にでもパームを貸与してくれる。
 報酬は無いに等しいので、敷居が高い。覚悟のある人間、腕に覚えのある人間しか寄りつかない。そうする事によって無駄な人死にを無くす。システム自体が、篩になっているのだ。
 さて、お次は、と。うむ、戦闘区域について。学校や病院などでは勿論だが、どこでもはアクセスできないようになっている。非戦闘区域、という。準戦闘区域になると、アクセスは出来るものの、武器の使用は出来ない。戦闘準備室や戦闘区域に接続したエリアなどがそれに当たる。
 う〜ん、今はこのぐらいしか説明できないかな。
 別に勿体振る訳ではなく、全部説明すると、以降書く事が無くなるからだ。タイトルがタイトルなだけに。
 もう好い加減飽き飽きしてきたが、もう少し書いておきたい事があるのだ。

「うん、うん。いいね。いいと思うよ。うん、有難う。ご苦労様、アキラさん」
「では、失礼致します」
「シンゴ、できたぞ」
「お、速いな。おし。あ、攻略データ、役に立ったか?」
「ああ。何人か、十人ぐらいかな? すぐにでもマシンガンに変えれる奴がいるらしい。いけるぜ」
「うん、よしよし。と、これだな。うーん。剣道部なんか全員出て貰おうか? この塊とかそうだろ? うん、いけそうだな・・・。・・・どうだ? こんなもんで」
「おお、なかなか……」
「まあ最終的には、このメンバー全員集めて、しっかり話し合って決めよう。早速作戦会議だ。今度は少し遠出しなくちゃならん。退路確保が重要な仕事になる。お前達も出れる奴は全員出てくれ」
「おう、任せろ!」

                BGM:時忘人
 報酬が無いという事は結局、自己満足、自分のプライド、周りに自慢できる、というモチベーションぐらいしか使い途はない訳で、詰まる所こういう輩が出て来る。むー、ぶっちゃけた話、ナルシストって奴だな。
 しかし、こういう奴はこういう奴で使い途はある。自尊心をこう、コチョコチョっと擽ってやりゃすぐ付け上がるんだな。ウザいのはウザいんだが、緊急事態だ。仕方ない。
 剣道部の主将、というのがいるんだが、まあそいつが典型的なナルシストだ。・・・。
登場シーンに音楽がかかりそうな、仰々しい芝居がかった台詞まわしとか・・・。
 何だか面倒臭いな。こいつの事については余り書きたくないな。・・・というキャラクターだ。察して欲しい。
それでも、こういう奴に限って口で言うほど強くない、というお約束が通用するほど甘い世界ではないので、多分大丈夫だろう。シンゴみたいにずっと一人でやれば別だが、パーティを組めば自ずと力量はバレる。弱い奴が剣道部の主将など務まる筈がない。
 あっ、と。名前。ヨシノブ、だってさ。こいつに関してはこんなモンでいいだろ・・・?

― + ―

 俺達は生まれた時代も世界も選ぶ事は出来ない。だが、戦うか戦わないかは選ぶことが出来る――。
    これは、まったく新しい体感アクションだ!!!
世界に蔓延るゾンビと戦うため、マーベラス・ファンタジー社とオーヴ・クエスタ社がタッグを組んだ!
  戦士達よ、剣を取れ! そして戦え! 世界を救うために・・・
      最初に見せていただいたのは、基本的なバトルの流れ。おーっと危ない! そこでインド人を右に!
                 「週刊サル通・レベル特集」から一部抜粋


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