BGM:格子の心臓 この辺りで、テストの事に触れておきたい。 実はシンゴ、テストが好きだ。テストが好きな奴なんかいない、と何かの本に書いてあったが、シンゴは、テストに対して悪感情を持ってはいない。 シンゴはテストを、能力テストや心理テストのような、自分が何者かを見極める判断材料として見ている。 だからシンゴは、テストの点数を誰かと比べる事には意義を見出さない。自分の、脳の状態、コンディション、能力の最大値、その他諸々が数字となって現れているのだ。 同じ理屈で “偏差値 ”と言うものにも、まったく興味を持つ事が出来ない。他人と比べる必要はないのだ。百点を取るのが偉いのなら、最初からコンピューターに入力させればいいのだ。人間は間違う。それでいい。それがいい。屈折しているだろうか?否、こんな巫山戯た問題で、個々の人間の学習能力が推し量れると思う方がよほど屈折している。 …失礼、つい熱くなった。 学校制度について一家言あるものの、テストについては手抜きをしないため、常に学年トップだ。しかし順位には興味はない。教師の用意した問題に自分なりに納得のいく答えを導き出す事が出来ればそれで満足する。そういう理由で、答え合わせにも必要性を感じる事が出来ない。自分の答えが一番正しい。人と同じで何が面白いのか。同じがいいなら優秀な人間をクローンで増やせばいいのだ。それは倫理的に間違っている、と正しく判断できるのに、画一性を求めて、出る杭を打つ。どうやってこの自己矛盾を呑み込んでいるのか理解に苦しむ。 …む。もうやめよう。 順位で思い出したが、ユーカはシンゴと付き合うようになるまで、いつもシンゴの直下、二位をキープしていた。二人が付き合い始めてから、シンゴは変わらないが、ユーカは一つ順位を落とす事が多くなったようだ。無理もない。あのように毎日毎日、…おおっ、と。 シンゴが成績を落とさないのは、勉強をしないからだ。嘘ではない。テストは学校の授業で教えてくれるものの中からしか出てこない。ならば、授業を真面目に聞いていれば、宿題など時間の無駄、良く言って二度手間だ。 余った時間は本を読む。これに尽きる。何でもいいのだ。今あなたが読んでいる金魚の糞のような雑文でも。 …うう、もうほんとに終わりにしたい。では
日が改まったので、気を取り直して、今度はダイエットについて。 どうも女子の話は、二言目には『ダイエット』という単語が出てくるような気がする(多少誇張している)。 シンゴはダイエットについて否定的な見方を取っている。 そもそも、肥満の原因はカロリーの異常な摂り過ぎである。そして、カロリーの摂り過ぎには脳が関係している。その昔、人類は、長い間残酷なくらい飢餓状態に曝されて過ごして来た。人類の歴史は、戦争も含めた文明文化の全ては、この飢餓状態からの脱却を目指したものであったのだ。その切なる願いを最近になってやっと人類は叶えた。人類は(一部に限るが)もう、嫌になるほど、吐いて(わざとだ)捨てるほど、膨大な量の食料を貪り食う事が出来るようになった。脳が飢餓状態だった時の事を忘れず、あればあるほどカロリーを求めるのだ。 おわかりだろうか。つまり “欲 ”を制御する事が出来れば、ダイエットする必要などないのだ。 少しカロリーを摂り過ぎたくらいなら、横着してエレベーターやエスカレーターなど楽を求めようとせず、自分の脚を動かせばいい。 “便利さ ”は人をどこまでも堕落させる。特に電化製品の功罪は、人間が長い歴史を掛けて構築してきた高度に圧縮されたノウハウをブラックボックス化してしまうところにある。過去に失われてしまったノウハウはもう、どんなに手を尽くしても読み取る事は出来ない。まったく、残念で仕方がない。 しかしまあ、シンゴも善人の類ではないので、欲に溺れる心理も理解できる。斯く言うシンゴも、嘗ては休みの日、週末、特に土曜日は、昼食を摂らずに読書に没頭するのが習慣だったが、最近は肉をもりもり食べるようになった。しかも他人の家で。しかも上半身裸で。ワイルドだろ?(あ、こういう小ネタは後で廃れた時、わからなくなるから止めた方がいい、と助言があったので止めておく)お腹が空くようなことをしなけりゃいいんだが、まあ、仕方がない。それはそれとして、とにもかくにも自分の信条、主義主張には出来るだけ忠実に日々生活したいものだと、常々思ってはいる。 世の中には主義主張を、ただがなり立てるだけで、普段の生活はまったくそれに準じていない輩が多いような気がする。中には、主張している事と正反対の事をしても、平然としている者もいる。ああはなりたくない。 ………。はて…?何の話だっけ…? ああ、そうだ…。この章では、シンゴの為人を理解して貰おうとしていたのだ。読み返してみると、何だか物凄い人物のようだな…。これでいいのか?終いには人類の歴史、とか言ってるし…。 でも、まあ、シンゴって、こういう奴だ。ドゥーユーアンダスタン?
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L.e.v.e.l [Living-dead Enterprise virtual entertainment log]:通称レベル。突如現れた恐ろしいモンスターによって、世界は一瞬にして地獄と化した。だがいち早くモンスターの特徴を調べた企業L.E.の研究機関により、有効な対処法が発見された。これによって、モンスター自体はそれほどの脅威ではなくなったものの、問題はその数である。ざっと数億とも数十億とも見積もられているモンスターを根絶やしにするのは、一企業はおろか、全世界の軍隊の力を結集しても手に負えるものではない。そこで、一般人にも広く募集を掛け、有効な装備とノウハウを提供し、モンスターを退治してもらう、という事になった。そのシステムが〔レベル〕である。こう書くと、ヒーローのようなものを想像するかも知れないが、実際は極めて薄給の、生命の危険さえ伴う仕事であり、ゲーム感覚の少年少女か、大人でも、血の気の多い目立ちたがり屋、正義の味方気取り、日銭稼ぎがてら正規部隊入りを目指すホームレスぐらいしか、あまり為り手はいない。実際、ターゲットの中心は中学生以上のティーンで、幾人もの有名なゲームデザイナーが装備品などのデザインを手がけていたりする。 「サルヂエトレンディ(付録・最新現代用語語句索引)」 サルヂエ学会
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