BGM:リラホルン 夏だ。 夏は好きだ。テンションが上がる。最高に “ハイ ”って奴だぁ、URYYYYY! ・・・はしゃいでみた。 特に嫌いな季節というものはない。本さえ読める環境があればそれでいいのだ。 これは持論であるが(あ、勿論シンゴの)、頭を使うためには、体を使いこなせていなければならないと思う。体を動かすにはそれ相応の温度が必要だ。だから暑いのは問題ない。 シンゴはどの運動部にも所属していないが、体を動かすのは嫌いではないし、寧ろ得意な方だと思う。暫定的な言い方をするのは、日頃『本気モード』みたいなレベルの争いや追い込みを自分に課した事がないからだ。俗に言う『流している』状態だ。 言い訳がましい文章に終始しているのは何故だろう。それは、このシンゴ独特の考え方に起因した厄介事が起こったからだ(自問自答)。 道成学園(お、これがシンゴの学校の名前か)では夏に水泳大会が開催される(順当である)。 簡単に言うと、そこで水泳部のルーキーにシンゴがうっかり勝ってしまったのだ。ここまで読み進んできた賢明な読者諸氏の中には(読者がいるものと仮定する)、もしかしたらシンゴは勝ち負けに拘らない人物なのでは、と推測する向きもあるだろう(いないと思うが)。まさにその通りである。 これは由々しき事態だ。あってはならない事だ。本気で一生懸命、とことん突き詰めて練習している水泳部員を差し置いて、どこの馬の骨とも知れぬ奴が、帰宅部の分際で、己許せぬ!そこに直れ、叩き斬ってくれる! と、こんな具合だ。しかしこれはシンゴ、本当にうっかりだ。対戦相手が見えていなかった。シンゴとしては、ただひたすら黙々と泳いでいただけなのだ。 しかし、翻って考えてみれば、そんな弁解をすれば余計に腹が立つというもの。 怒髪天に達したその少女に、リベンジを言い渡された。 そう、少女だ。名を スミレ、という。可憐な、野辺に咲く花の名だ。良い名前ではないか。 実際見た目も、背が低く可愛らしい。栗色のショートヘヤ、くるくる変わる人懐っこそうな表情、何より日に焼けた野性味溢れる褐色の肌。元気だけが取り柄みたいな快活そうな少女だ。 もう少し詳しく説明すると、もし、この駄文がアニメになるとしたら、彼女のCV.は釘宮さんでお願いしたい(この説明で完璧に理解できた奴駄目人間決定)。 ところがどっこい(接続詞のストックが切れてきた)これが苛烈な少女で、本当にさっきの時代劇みたいな口調でシンゴに激昂したのだ。厄介さん二号。・・・一号は勿論愛しのユーカだが、人前では口が裂けても言えない。 決闘の日時と場所を指定した矢文が飛んで来そうな剣幕だったが、残念ながらそこまでではなかった。 声に出して「うんざり」と言いたくなるようなうんざりした気分で、指定の時間にプールに向かうシンゴ。
BGM:Dear cocoa girls プールへの階段を上ると、スクール水着の少女が一人、不敵な笑みを浮かべて仁王立ちしていた。 「来たわね」 「はぁ、まあ・・・何というか。この度は大変ご迷惑を・・・」 「つべこべ言わず、とっとと勝負よ! 今度は絶対勝ぁつ!」 「はぁ、じゃあ、僕は負ければいいんですね・・・了解しました」 「ちょっ、ちょっと待った! それじゃ勝負にならないじゃない。あなたも本気出して」 「じゃあ、勝てばいいんですか?」 「むっくわぁ! どういう事よ!」 「あの時言いましたが、僕が勝った時、僕は本気出してません。恐らく真面目にやれば、スミレさんは僕には勝てませんが」 「きー! ワザと負ける奴に勝っても意味ないじゃない!」 「じゃあどうすれば気が済むんですか? スミレさんの思う通りの方法でやりましょう」 「その余裕が一番むかつく! とにかく、あたしが勝ったら、水泳部に入部しなさい!」 「ええ、いいですよ。スミレさんが勝てば、ですけど」 「ん、ちょっと待って。あたしが負けても入ってくれる?」 「う〜ん、どちらか一方にしてくれませんか?」 「うぐ、あうぅ、えっとおぉ〜・・・」 突然ですがここでクイズです。 アラブの大金持ちが、二人の息子のどちらか一方に、全財産を分けることにした。砂漠を駱駝に乗って競争し、勝った方にやるのだ。だが、ただの競争では面白くない。のろのろ競争だ。つまり遅くゴールした方の駱駝に全財産を与えよう、と言うのだ。二人の息子は父親に言われた通り、砂漠の真ん中で、半死半生となりながら競争を続ける。そこに、通りすがりの賢者が現れ、二人にある助言を施すと、その助言に従い一目散に走っていった。 何故か?
答え。二人は駱駝を取り替えたのだ。遅くゴールした方の駱駝が勝ちになる、ならば相手の乗っていた駱駝を先にゴールさせた方が勝ちになる競争にしたのだ。 特に意味は無いが、彼らのやりとりからこのクイズを思い出した。
― + ― 日本政府直属の代替統治機関としてのL.E.:ぶっちゃけ、この国家存亡の危機に対して、政府はまったく何も出来なかった。 そもそも、地震の発生が他の国より圧倒的に多い日本においての大地震程度で大混乱する体たらくなのだから、得体のしれないモンスターがわんさか街に溢れてくる事態などに対処できる筈もない。そういうわけで、頭のおかしくなった当時の内閣は、いち早く事態に対処したL.E.に途轍もなく大きな権限を与えて、どうにかするようにと、一切合切丸投げしたのであった。当時の国民も心得たもので、怒りを通り越し、呆れたり、感心したりしていたそうな。もちろん一部では、ぽっと出の会社に一国家が乗っ取られる、と小規模のシュプレヒコールも散見したようだが、L.E.がこの異常事態に的確に対処する様子を見て、すぐに収まっていった。 「サルでも分かる日本近代史」 サルヂエ学会
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