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作品名:チェンジライフ 作者:晴犬

第2回   第2話:ダチと海と…ナンパ!?
オレが憧れている岩岬音瑠(いわさき ねる)との出会いは3ヶ月前。
まだ不良学生として、バイクを乗り回していた頃だ。
岩岬先輩との出会いがなければ、いまも同じ事をしていただろう。



3ヶ月前――7月28日。
夏休みに入ってすぐ、オレは家を飛び出してダチと海までバイクを走らせていた。


「やっぱ気持ちいいな! なあ美貴。免許、取ってよかっただろ?」

オレの後ろを走るのは、千里知己(せんり ともき)。小学生の頃からの悪友だ。
知己の“とき”と美貴で、よく『ときめきコンビ』とか言われてる。
…“みき”の1文字を勝手に“め”に変えだしたのはどいつだっただろうか。
オレはその呼び名は不服だが、知己は面白いと気に入っているようだ。
“ときめきコンビ”の後ろにも、十数人のダチや後輩が爆音を鳴らして走っている。

改造されたバイクの騒音はうるさく、叫ばないとお互いの声も良く聞こえない。

「たまにはお前の言うことも役に立つもんだ。」

オレは皮肉を込めてそう告げた。
だが、正直な話、知己には感謝している。
夏休みの間もあの家にずっといるかと思うと、吐き気がしそうだったからな。
中学生の頃までは、割と仲の良い家族だったが、ある事件のせいでオレの家族は崩壊した。
それ以来、オレはろくに家にも帰らず、学校にも行かず、
仲間たちとぶらぶらすることを一番の楽しみにしている。
バイト以外の時間は、一人暮らしの知己の家に居候している。
大人たちからすればただの不良ってヤツだ。

盗みや恐喝なんていう、人の道に外れたことはしないのがオレの心情だが、
仲間内にはそういうことをするヤツもいる…。
でも、ソリの合わないヤツを締めあげたり、ケジメをつけさせることはしない。
だって、面倒くさいだろ?
好きに楽しくやれるならそれが一番だ。
特に目的もなく、遊ぶときは集まる。そんなゆるい関係。
オレはそんな関係が気に入っていたし、仲間たちもそうだと思ってる。


バイクを止め、砂浜に降り立つ仲間たち。
海に来たからといって、特に何をするわけでもない。
ぼんやりできれば、それでオレは満足なんだ。
だけど…そう都合よくはいかなかった。

「なあ。せっかく海に来たんだから、ナンパでもしようぜ?」

知己が無駄にさわやかな笑顔で提案する。
こいつは金髪に色黒でイケメンという、仲間内でも一番のモテ男だ。
常に女の影が消えたことがなく、女を求め続ける…。
節操がないというか、オレには理解できない思考の持ち主だ。


オレは恋愛なんぞに興味はないし、ダチと遊べればそれで良いんだけどな。
でも、こいつらはそうじゃないらしい。

「いいっすね、知己さん!いっちょやりますか!」

後輩たちは知己の提案にやる気になったようだ。

………おいおい、マジかよ。
オレ、ナンパとかしたことないっての。
このままじゃ、オレまで参加するハメになっちまう。

――その初めてのナンパが、オレの人生を変えちまうなんて、
このときのオレは知るよしもなかった――。


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